消滅した石本集落に残る廃屋=神山町上分

 あるじを失った空き家や朽ちた廃屋が、ひっそりと立っていた。2018年秋に居住者がいなくなり、「消滅」した徳島県神山町上分・北谷地域の石本集落。町内では昨年4月1日までの4年間に五つの集落が消滅したとされる。IT企業のサテライトオフィス(SO)進出などで注目を集める町の影の部分が垣間見えた。

 神山町上分の上分公民館から国道193号を車で北へ3分ほど進んだ先に北谷地域がある。北谷川に架かる短い橋を渡り、落ち葉や小石に覆われた山道をさらに5分進んだ標高470~520メートル地点に石本集落はある。

 車を降りて小道を歩くと、一軒の木造2階建ての廃屋が見えた。屋根や壁は崩れ、戸や窓の一部はなくなっていた。室内には籠や障子などが散乱し、庭にはススキや雑木が生い茂っていた。

 最後に集落を出た1人が住んでいたとみられる空き家には、布団やこたつ、冷蔵庫などが残る。外観は朽ちておらず、庭もきれいなままだ。別の屋敷の石垣に設けられた小さいほこらには、ご神体とみられる丸い石が祭られていた。

 北谷地域には石本のほか、一宇夫、西久地、立岩、中峯、名、名ケ平の6集落がある。名集落の農業竹内良明さん(72)によると、1960年ごろは約100戸が葉タバコやムギ、サツマイモの栽培、林業などで生計を立て、500~800人が暮らしていた。

 石本集落には半径150メートルの範囲に12、13戸あった。しかし、多くは徳島市や石井町に出稼ぎに出て、そのまま引っ越した。74年には台風で地滑りが起き、2軒が転居を余儀なくされた。町の住民基本台帳では、2018年10月に最後の住民が転居し、集落が消滅したことになっている。

 北谷地域全体の人口も徐々に減り、今月1日時点で42世帯64人。そのうち23世帯は1人暮らしだ。竹内さんは「どこも限界集落になった。10年後には住民同士の安否の確認もままならなくなるだろう」と言う。

 町によると、5月11日時点で町内にはIT企業など15社がSOを構える。19年度には8年ぶりに社会動態が4人増となった。一方、自然動態は毎年100人以上の減少が続く。1日時点の人口は5173人で、09年3月末に比べ21・5%減っている。