新型コロナウイルスの感染拡大による休校の長期化を受けて政府が導入の可否を検討している9月入学制について、徳島新聞「あなたとともに~こちら特報班」は5月25~29日、公式LINE(ライン)登録者に賛否を聞いた。来年度までの導入は見送られる公算が高まっているものの、「この機会を逃すと世界に取り残される」と早期の導入を求める意見と、「学習の遅れを取り戻す施策を優先させるべきだ」などと反対する意見がほぼ拮抗。「受験や教育制度を見直す機会にしてほしい」と願う声も目立った。
9月入学制への賛否とその理由について尋ねた。39人から回答があり、賛成は16人、反対は15人。「どちらでもない」が5人で、無回答は3人だった。子育て中の保護者が回答者の多くを占め、高校生や教員、大学教授らからも意見が寄せられた。
賛成の理由として多かったのは「海外では秋入学が主流なので、日本も国際基準に合わせるべきだ」(7人)、「受験の時期をインフルエンザなどが流行する冬から夏に変更した方が良い」(5人)など。
北島町の男性会社員(52)は「入学式だけして授業が始まらなかった状況からすると、9月に一斉に始める方が平等」。大学受験を控える男子高校生(18)は「受験生が安心できるよう勉強の時間を確保してほしい」と、学習の空白期間を理由に賛成する声もあった。
一方、反対の理由としては「入学時期を変えるより学習の遅れをどうするかを検討すべきだ」(4人)、「入学と卒業は桜の季節が良い」(4人)などが目立った。
9月入学になると、今の幼稚園・保育園児は4月2日~9月1日生まれの子が早く入学し、学年が分断される。これに強い反発を示す保護者もおり、「全ての未就学児が犠牲になる」「小学生以上の学びを保障するために未就学児の学びの場が奪われるのはおかしい」などの意見があった。
私立大の男性教授は「現行の各種制度は4月を始まりとするものが多く、これらと整合性を取るのは非常に困難」と指摘する。
自民、公明両党は家庭の負担増や社会的混乱を懸念し、「9月入学制の導入を見送るべきだ」などとする提言案を作成。政府も慎重姿勢を強めており、7月中に方向性が示される見通し。
◆オンライン授業拡充を求める声も多く
「あなたとともに~こちら特報班」の公式ライン登録者からは、9月入学制への賛否だけでなく、現行の教育制度の改革やオンライン授業の拡充などを望む意見が多く寄せられた。
「足し算ができないまま2年生になり、苦しんでいる児童がいる。『みんな一緒』ではなく、必要な力を身に付けてから上の学年に送ってあげたい」。小学校の女性教員(38)は自らの経験を踏まえ、教員の増員や授業時数の軽減を要望。「この機会に履修制から習得制へと社会の意識を変えてほしい」と訴える。
高校1年と中学1年の子どもを育てる吉野川市の自営業の女性(48)は「休校中のオンライン授業など、徳島と他県では学習支援に差があった」と指摘。夏休みを短縮できる2学期制を本年度に限って導入した北九州市を参考に「コロナ禍で再び休校措置となった場合を考慮し、2学期制の導入を検討してはどうか」と提案する。
オンライン授業の拡充を求める声は多い。石井町の女性会社員(40)は「インターネットやケーブルテレビを通じた授業を充実させてほしい」。別の女性は「新型コロナの第2波、第3波に備え、制度改革よりも設備投資に一刻も早く取り掛かるべきだ」とのメッセージを寄せた。
感染予防策を兼ね、1学級の定員減を求める声も目立った。元小学校教員の女性は「18人のクラスを担任したときは個別指導に近いくらい丁寧に指導できた。定員を減らすだけなら多額の予算はいらない」。徳島市の医療業の女性(45)は「義務教育では学習の遅れがある子に立ち止まって教えられるよう、20人単位が望ましい」とつづった。
高校生からは部活や行事が次々と中止になる現状を憂う声も聞かれた。吹奏楽部に所属する3年の女子生徒(17)は「高校生活の青春は部活だけだったので耐えられない。運動部の人も未練があるだろう」と吐露し、「卒業を来年6月に延長してほしい」と望んだ。