米ハリウッドに端を発する「#MeToo」(ハッシュタグ・ミー・トゥー)。意味は「私も」。今や性被害を糾弾する世界の合言葉である
セクハラ疑惑を巡る財務事務次官の辞任劇も、強力な「ミー・トゥー」のうねりの中で起きたといえよう。だが、まさか野田聖子女性活躍担当相が声を上げるとは思いも寄らなかった
「20代の落選中、男性からほぼ慢性的に性的な嫌がらせを受けていたが仕事のため我慢せざるを得なかった」。18日の衆院内閣委員会、野田氏はセクハラ被害に遭った体験を打ち明けた。前日には財務次官の疑惑に関連し、調査名目で被害者に名乗り出るよう要求した財務省を批判している
被害体験を告白するには相当な覚悟が要っただろう。おきて破りとされる閣内批判である。財務省の姿勢がよほど腹に据えかねたか。毅然(きぜん)と正しておかねばと意を決したか。そう胸中を察する
徳島県内で二十余年前にあった事案を思い出した。大学院で学んでいた女性が、当時の指導教授からセクハラを受けたと提起した民事訴訟。最高裁まで争って勝訴した日、女性はこう感想を語った。「セクハラに対する社会の受け止め方が重みを増してきた」
判決から年月を経て「重み」は一段と増している。財務省は世論の多くを敵に回した。信頼はそう容易に取り戻せそうにない。