「官庁の中の官庁」「最強官庁」と言われた財務省の威信は、もはや見る影もない。

 女性記者へのセクハラ疑惑で批判を浴びる事務方トップの福田淳一事務次官が、辞任を表明した。事実上の更迭だが、対応が遅すぎる。

 福田氏は、女性記者へのセクハラ発言を週刊新潮で報じられ、ニュースサイトで音声も公開された。

 しかし、福田氏はセクハラを否定しており、辞任するのは「職責を果たすことが困難な状況になっている」からだという。

 釈然としない。事実でないのなら、辞任せずに職責を全うできるはずではないか。

 テレビ朝日は、同社の女性社員がセクハラの被害者だと公表した。同社によると、女性社員は1年半ほど前から数回、福田氏と会食し、そのたびにセクハラ発言があり、身を守るために録音していた。

 上司に相談し報道すべきだと主張したが、個人の特定や二次被害の懸念を理由に「難しい」と伝えられた。

 このため、女性社員は今月4日を含む複数回の会食時の録音を週刊新潮に提供した。「社会的に責任が重い立場の人物による不適切な行為が表に出なければ、今後もセクハラ被害が黙認されるという強い思いから」だとしている。

 ただ、本来は自局での報道を検討すべき問題であろう。

 テレ朝の発表後も、福田氏は「全体を見ればセクハラに該当しない」と改めて否定したが、これまでの釈明では不十分である。

 見過ごせないのは、財務省が、疑惑の調査を弁護士事務所に依頼し、記者クラブ加盟各社の女性記者に、調査への協力を要請したことだ。

 名乗り出る女性の精神的負担や人権に対する配慮に欠けており、政府、与党からも批判が出たほどだ。記者クラブが受け入れられないとして、財務省に抗議したのは当然である。

 福田氏が辞任して、幕を引くことは許されない。真相を解明し、他に似たような事例がないのか、再発防止策も含めて、政府や国会で調査、議論を尽くす必要がある。

 財務省は失態続きだ。学校法人「森友学園」への国有地売却を巡る決裁文書改ざん問題で、3月には佐川宣寿前国税庁長官が辞任した。

 次官と同庁長官が実質不在なのに加え、森友問題で幹部級も含めて大量処分は避けられないだろう。

 財務省の信用が失墜したことで、政府内での発言力の低下は免れまい。こんな体たらくで、財政再建論議を主導できるかどうかは、甚だ疑問である。

 来年秋には消費税率10%への引き上げが予定されている。信頼を取り戻さなければ、負担増への理解は得られない。組織の立て直しが急務である。

 麻生太郎副総理兼財務相は、一連の不祥事の監督責任をどう考えているのか。国民が納得する対応を求める。