写真を拡大 「ラビットは所有感がすごくあるバイク。新しいペットがやって来た!みたいな感覚になると思いますよ」。

PUAKO SHOP 根岸和之さん(45・神奈川県出身)

 丸みを帯びたボディデザインが愛らしいスクーター「ラビット」。スピード感や力強さとは対極の優しげな雰囲気を漂わせる。1947年に富士産業(現SUBARU)が販売開始し、一躍大ブームを巻き起こした初の純国産スクーターである。1968年に製造を終えたが、古い車体に手を加え今もファンの間で乗り継がれる名車だ。そのラビットの専門店が鳴門市・大毛島にある。

 店を営むのは根岸和之さん。子育てにいい環境を求め、2014年に茨城県から大毛島に家族3人で移住した。茨城では自動車とバイクの整備工場を経営していたが、新しい生活を始めるのを機に「いつかは」と思い描いていたラビット専門店に舵を切った。「友人や知人には『知らない場所でいきなりラビット専門? それ大丈夫か!?』って笑われましたけどね。不安はあったけど、やり方次第でどうにかなるって思ってました」。

写真を拡大 Rabbit S601(参考車両) 全長1900mm、燃費25km/L、総排気量200cc。S601は50万円~(カスタムの内容により異なる)。

 人生を捧げることになるラビットとの出会いは中学時代。「近所にサーフィンしてる5、6歳上のオシャレな人たちが集まる家があったんですよ。ある日、そこのガレージでバイクのエンジンが久々にかかった、という瞬間を見たんです。そのときの音とか煙とかがめちゃくちゃ印象的で、調べたら国産のラビットというバイクだった。16歳でバイクの免許取って、バイク雑誌の個人売買のページでラビットを見つけて手に入れたんです。むちゃくちゃ嬉しかったです」。

 それ以来、ラビットへの興味は尽きることがない。「スペックを見ればすごく真面目に作られてるなって思うんです。バイクなのにごっつい鉄板が使われてて、ちっちゃい車みたいな感じ。内部構造はパーツごとに細かく部品が分かれてるから故障した箇所だけ交換できる。長持ちするようになってるんです。国産でこんないいバイクがあるのに知ってる人が少ないのはもったいない。もっといろんな人に乗ってほしいと思ったんです」。

 2015年、ラビット専門店「PUAKO SHOP」をオープンさせた根岸さんは、店の個性として「自由さ」を打ち出そうと決めた。「ラビットのレストアは昔からのオーソドックスなやり方が主流で、ちょっと違うことすると『そんなのやっちゃうの?』って空気がある。でも、もっと自由でいいじゃんって思うんです。オリジナルのカラーリングをして、機能的なバッグを装着して。うちではこういう風にやってますっていうのをアピールしていく。3年やってうまくいかなかったらまたその時に考えようって思ってスタートしました」。

写真を拡大 「プアコ」は根岸さんがちょっとだけ暮らしていたハワイ島にある町の名前。

 オープン後、タウン誌や新聞で取り上げられると、「昔乗りたかったけど、そのときは叶わなかった」という人や、初めてラビットというバイクの存在を知って興味を持った人が来店するようになった。また「うちにもラビットあるから買い取ってほしい」という申し出が何件もあり、県内各地へ引き取りに出向いた。

 ショップの作業場には、全国から回収した往年の名車に再び命を吹き込む根岸さんの姿がある。錆びついた車体を解体して修理し、エンジンをオーバーホールして、ボディを塗装する。新しいタイヤを装着し、ドリンクホルダーや携帯ポケットなどのアクセサリーを取りつける。新生ラビットはレトロな匂いを漂わせつつ現代的な表情も併せ持つ。「だんだんオーナーさんが増えてきていますよ」と目尻を下げる根岸さん。半世紀前、日本の職人たちが技術を凝らしたスクーターが大毛島から走り出す。

 

住所=鳴門市鳴門町三ツ石芙蓉山下226
088-679-9996
営業時間=10:00~19:00
定休日=不定休

駐車場:あり
キッズスペース:なし
多機能トイレ:なし
開店:2015年
Wi-Fi:なし
問い合わせはインスタグラムのダイレクトメッセージにて対応。