アワシャンティ初の店舗営業に踏み切った有吉裕之さん=阿波市土成町

カレーに揚げナンと副菜なども付いた日替わりのカレープレート

こだわりの本格インドカレーを仕込む有吉さん

知人の協力で準備した椅子やテーブルなどで整えた手作り感のある店内=阿波市土成町

 東日本大震災に伴う原発事故を機に埼玉県飯能市から阿波市に移住した有吉裕之さん(58)=阿波市吉野町=が経営する本格インドカレー店「アワシャンティ」が、4月末から同市土成町で初の店舗営業を始めた。2013年に自宅を改造して開業して以来、受注販売とイベント出店のみというスタイルを貫いてきたが、知人らの後押しを受け「地域のにぎわい作りに役立ちたい」と決断した。

 「アワシャンティ」は県道鳴門池田線沿いにあり、店舗面積が約35平方メートル、座席数は約15席。無投薬の県産スダチ鶏を使った「ムルギカレー」(ルーのみ、税込み500円)が開業当初から続く定番メニューだ。

 ムルギカレーは、みじん切りにしたタマネギをシナモンやクローブなどと一緒にあめ色になるまで炒めて香りを引き出し、焼いた鶏肉やトマト、独自配合の粉末スパイスを加えて煮込んでおり、食材本来のうま味を生かしながら本場仕込みの程よい辛さがアクセントになった豊潤な味わいを楽しめる。

 店舗営業スタートに合わせてメニューを増やしており、旬の地元食材を取り入れて作った日替わりカレーの他、キュウリのピクルスやキャベツのポリアル(炒め物)といった副菜、地ビールなども取りそろえる。

 有吉さんが店舗営業を始めたきっかけは、別れた妻が昨年膵臓(すいぞう)がんで急死したことだった。20年以上連れ添った元妻を突然亡くした失意の中で、埼玉時代の元仕事仲間と再会し「店を新しく開業するので一緒に働こう」と誘われた。

 いったんは埼玉行きを決めた有吉さんだったが、新型コロナウイルスの影響で延期に。そんな時、7年間親しんだ有吉さんのカレーを食べられなくなることを惜しむ阿波市の知人からテナント貸し出しを提案された。

 有吉さんは「徳島にいられる間に、これまでお世話になった人たちにお礼がしたい」と店舗営業を決意。知人らの協力で内装を施し、厨房(ちゅうぼう)機器や看板、テーブル、椅子を用意してもらって低予算で開店を実現した。

 有吉さんはプロカメラマンだった26歳の時に、半年間滞在したインドで本場のカレーに魅了されてシェフに転身。埼玉で15年間経営した店は行列が絶えない人気店だったものの、利益を追求して周囲の評価に振り回される生活に嫌気が差した。

 阿波市移住後は店を持つ意欲が沸かずにいたが、地域の集まりで振る舞ったカレーが評判を呼んで教室開催の依頼が舞い込むようになった。県内のイベントなどに出店して客が喜ぶ顔を間近で見るうちに、料理する喜びを取り戻した。

 開店以来、店舗営業を待ちわびていた常連客や県内のカレー愛好家らが次々と訪れているアワシャンティ。有吉さんは「埼玉に戻る前に、地域に少しでも恩返しできれば。人が気軽に集える場所になってほしい」と期待を込めた。

 場所は阿波市土成町土成南原320-2。営業時間は午前11時半~午後5時。月曜休、日曜不定休。問い合わせは有吉さん〈090(6799)9949〉。