打撃技のパンチやキックと、寝技や関節技を融合した日本発祥の総合格闘技「修斗」。徳島市の総合格闘技ジム「MMA Zジム」に所属する山下真菜さん(18)は高校在学中に修斗のプロ資格を取得し、今後の活躍が期待される逸材だ。近年の格闘技界では浅倉カンナ選手やRENA選手ら女性格闘家が注目を集めている。山下さんは県内を拠点に練習を重ねながら、人気上昇中の女性格闘技界に名乗りを上げる機会をうかがっている。

ミット打ちで得意の右フックを打ち込む山下真菜さん=徳島市不動東町

 山下さんのファイトスタイルは、相手の動きに合わせて打撃を繰り出すアウトボクシング。元プロ修斗選手で師匠の安芸佳孝さん(47)は「得意の右フックは女性離れした破壊力。パンチやキックを絶妙なタイミングで打ち込む感覚にも優れており、プロでも活躍できる」と絶賛する。

 山下さんが修斗と出合ったのは中学3年の冬。修斗を始める兄に付き添ってZジムを訪れたのがきっかけだった。当時は格闘技をテレビで見る程度で「自分でやる気は全くなかった」と言う山下さんだが、安芸さんの勧めでミット打ちを試したところ、本人も気付いていなかった資質を見いだされる。

師匠の安芸さんから指導を受けている山下さん=徳島市不動東町

 山下さんは身長154センチと小柄ながら、中学校では3年間、部活動でバスケットボールに打ち込んでいた。安芸さんは「女性のパンチは手打ちになりがちだが、腰が入った良いパンチを打っていた」と振り返る。安芸さんの言葉に気分を良くした山下さんは、兄に続いて入会を決めた。男性選手に交じってミット打ちやシャドー、スパーリングなど連日約3時間のハードな練習を続け、高校1年の12月に試合デビュー。3戦2勝1敗と実戦経験を重ねていった。

 山下さんは4人きょうだいの紅一点。男兄弟に対抗するために培われた負けず嫌いの性格は修斗の練習や試合での底力になっている。修斗を始めるきっかけとなった4歳年上の兄は現在、徳島市内でパーソナルジムを営んでおり、筋力トレーニングや食事管理、ユーチューブを使った寝技の研究に関するアドバイスをしている。山下さんは「いつも応援してくれて感謝している」と話す。そんな彼女の一番の悩みは試合に向けたハードな減量だ。しかし「痩せたら、周りが『かわいくなった』と言ってくれるので頑張れる」と笑い、常に前向きに取り組んでいる。

サンドバッグを相手にこだわりの打撃技に磨きをかける山下さん=徳島市不動東町

 山下さんにとって転機となったのが、昨年9月に神奈川県で開かれ、プロ昇格のきっかけとなった「全日本アマチュア修斗選手権」だ。過去最多の9人が参加した女子アトム級(47・6㌔以下)に出場すると、1回戦を勝ち上がり、準決勝で柔道歴21年の優勝候補と対戦。打撃で圧倒しながら寝技に持ち込まれて敗れたものの、優勝したこの相手選手に善戦して3位入賞を果たした実力が評価され、10月にプロライセンスを取得した。

 11月には第一線で活躍するRENA選手や浜崎朱加(あやか)選手らが広島県で行った合同練習に参加した。「一流選手の練習はこれまでで一番過酷だったけど、プロの厳しさを体験できて刺激を受けた」。高校を卒業した今年4月からは、県内の保育専門学校に通いながら練習に励んでいる。

 6月に大阪で予定していたプロデビュー戦は新型コロナウイルスの影響で中止となったが、山下さんの意欲は衰えていない。「ファンが見たくなる〝魅せる〟選手になりたい。得意の打撃にこだわりつつ、寝技もこなせるオールラウンダーを目指す」。静かな闘志をたたえた瞳は、世界の強豪と拳を交える日を確かに見据えていた。