新型コロナウイルスの影響が一段落したとはいえ、第2波、第3波を警戒しての自粛ムードが続く昨今、ストレスを感じているという人も多いのではないだろうか。そんな鬱(うつ)な気分をスカッとさせたいなら、「アドレナリン」(2006年、マーク・ネヴェルダイン&ブライアン・テイラー監督、ジェイソン・ステイサムら出演)がうってつけだ。

 

 フリーの殺し屋チェリオスは睡眠中、敵対するマフィアに劇薬を投与されてしまう。その薬はアドレナリンの分泌を抑制し、1時間後には心臓を停止させてしまう猛毒だった。チェリオスはあらゆる手段でアドレナリンを出し続けながら、解毒剤を持つ敵を探して街中を駆け巡る。

 本作の売りは全編にわたる疾走感と高揚感だ。主人公は何がなんでも興奮状態をキープし続けなければならず、全力疾走しながら思い付いたように強盗をしたり、すれ違う人をいきなり殴ってけんかをふっかけたり、コカインを大量摂取したりと、やる事なす事が破天荒の一言。

 

 果ては、警官をからかい白バイを奪った上に座席に立って曲乗り。患者を救急搬送中の医師を脅して興奮剤を奪ったり、自動体外式除細動器(AED)を使って体に電気ショックを与えたりもする。

 主人公は至って真剣そのものでありながらも、やりたい放題やり過ぎる行動の数々は完全にコメディーの趣。シリアスの「向こう側」を突き進む暴走アクションは見る者を知らず知らずのうちに痛快な気分にさせてくれる。

 主人公を演じるのは「トランスポーター」シリーズのアクションスター、ステイサム。常に仏頂面の暴走キャラクターを体当たりで熱演している。その一方で、どこか憎めない不思議な愛嬌(あいきょう)を兼ね備えた希有(けう)な存在感も存分に発揮しており、荒唐無稽な物語を見事に成立させている。(記者A)

【記者A】映像ソフト専門誌編集者、フリーの映画ライターを経て徳島新聞記者を務める。映画関連記事の編集や執筆、インタビュー、ロケ現場の取材などに長年携わり、1年間で365本鑑賞した年もあるなど、映画をこよなく愛する。