県内4人目の感染例となった男性が、家族構成の公表などを不服に思い、県に提出した申入書。男性によると、県から文書回答があったが、明確な謝罪はなかったという

 「SNSにいろんな情報が書き込まれている」

 新型コロナウイルス感染の徳島県内4例目となった男性が身内からそう教えられたのは、県による発表から間もなくのことだった。

 勤務先、居住地区、家族の情報・・・。「徳島」「4人目」「コロナ」と検索すると、ツイッター上で真偽入り乱れながら分刻みの書き込みが続いていた。

 投稿は個人情報にとどまらなかった。会社員として出張していた神奈川県内で感染したとみられることに絡め、「自分のことしか考えていない」など、行動をあしざまに批判する投稿も目立った。

 男性が出張したのは3月中旬から4月頭まで。首都圏での感染が急拡大し、日増しに緊急事態宣言発令の可能性が叫ばれるようになった時期だった。それゆえ出張中は感染防止に気を配り、4月3日に徳島に戻ってからも万一に備え、家族のいる自宅ではなく、ホテルや親族の空き家で単身過ごした。細心の注意を払ったつもりだったが、「国賊はさらし首じゃ」などと厳しい矛先も向けられた。次第に見るのが嫌になり、チェックするのをやめた。

 個人情報や批判がSNS上にあふれた一因として、男性は県の公表の在り方を問題視する。4月21日、飯泉嘉門知事は男性の情報として、徳島市在住としたほか、同居する家族の構成や仕事の業種を明かした。一方で、帰県後に注意を払っていたことは十分に説明されなかった。

 男性は家族構成や業種について公表を拒んでいた。「徳島みたいな所では、そこまで言うとすぐに特定できる。家族構成を公表する必要がなぜあるのか。感染者は家族を守ることすら許されないのか。感染が拡大しないよう、正直にいろいろ話した自分がばかだった」と後悔を口にする。

 匿名の投稿が横行するネット社会に巻き込まれた感想を、男性はこう語る。「感染した人の気持ちは、なっていない人には分からない。知事も、県の担当者も分からない。体が壊れ、心も病む。それを軽くけなす人って、どうなのかと問いたい」。再発する可能性を警戒し、退院から1カ月が過ぎた今も部屋を借り、家族と別に暮らす。「元の生活にいつ戻れるのか」。不安は今も消えない。

 県内では5人の感染が確認され、個人情報を巡るデマも広がった。徳島市の男性会社役員(52)は無料通信アプリ「LINE(ライン)」上のグループで、ある感染者情報として「家に落書きされて引っ越した」と書き込んだ。グループ内の友人は「まじ? そりゃかわいそうだ」と応じた。実際は引っ越しなどしていない。デマはこうやって人から人へと拡散した。

 発信した男性は、後になり、事実でないと知った。「知人の経営者の奥さんから聞いた。ありそうな話だし、自然と信じた。徳島のような狭いムラ社会では生きていけなくなったとしても不思議でない」と投稿当時の思いを振り返った。