「読書の喜びや本の楽しさを感じる工夫を」と話す野口さん=徳島新聞社

 子どもが本を読まない―そう嘆く保護者の声をよく耳にする。小学生ともなると「読書」が学校の宿題になることも。ゲームやインターネットに熱中する子どもたちの関心を、どう向ければいいのか。元県小学校教育研究会国語部会会長で徳島新聞NIEコーディネーターの野口幸司さん(61)に、読書好きに導くためのポイントを聞いた。

 Q 本を好きになってほしくて、いわゆる「名作」を与えてきましたが、見向きもしません。

 A 本が苦手な子は、本とうまく出会えていないのです。やみくもに与えるより、子どもの発達に応じた作品を選ぶことが大切。そこで参考になるのが教科書です。長く掲載されている作品には選ばれる理由があります。その作者のシリーズや別の作品などを読ませてあげるといいですよ。

 Q 発達に応じた―とはどういうことですか。

 A 個人差はありますが、小学1~2年生は自分が物語に入り込める内容を好みます。特に2年生は、登場するキャラクターに同化して楽しみます。1年生なら「おおきなかぶ」、2年生なら「スイミー」が代表例。3~4年生は登場人物同士の関わりや展開に興味を持ち、死や別れを描いた物語を理解できるようになります。例えば「ごんぎつね」「おにたのぼうし」。5~6年生になると、普遍的で生き方を考えさせられる内容になります。立松和平の「いのちシリーズ」が好例です。

 Q 漫画はどうでしょうか。

 A 漫画もいいですね。手塚治虫の作品「紙の砦」は、教師時代に6年生の国語授業の教材に使いました。例えば、今話題の人気漫画「鬼滅の刃」。荒唐無稽な設定ですが仲間との絆が丁寧に描かれています。悪役である鬼にも物語がある。さまざまな世代の人たちが「意味付け」できる作品になっていて、これが人気の秘訣だと思います。

 Q 「鬼滅の刃」のスピンオフ小説は読みます。

 A 好きなもの、興味があるもの、意味付けができるもの―そんな作品を見つけて読めるのが読書の楽しさ。私は映画のノベライズ本が好きでした。映像を見た後に読み、さらにイメージを膨らませていました。人気アニメやゲームのノベライズ本、漫画のスピンオフ小説もよく見掛けるようになりました。それだけ需要があるのでしょう。

 Q 飛ばし読みをする癖が気になります。

 A 飛ばし読みは速く読む練習になります。飛ばし読みの最たるものが新聞。見出しを見て、興味のあるところを読む。読む力を付ける上で大事な技術です。飛ばすところは飛ばしていいし、一字一句すべて読む必要はない。子どもも自分が気になるところは、しっかり読んでいます。

 Q 図書館に連れて行っても、本を少し見ては戻すを繰り返します。

 A 自分の気に入る本を探すというのは、金脈を探すのと同じ。それに適しているのが図書館です。「環境」も大切な要素で、本嫌いの子でも図書館に行くと何かしら気になる本を見つけます。借りても読まないことはあるでしょうが、気長に図書館通いに付き合ってあげるといいですよ。

 Q 何をしても本を嫌がる場合は。

 A これまでの話と矛盾しますが、発達を無視して絵本を試してください。お薦めは、「がたんごとんがたんごとん」「だるまちゃんとてんぐちゃん」「ガンピーさんのふなあそび」。年齢を問わず心が癒やされます。いずれも願いをかなえてくれる(かなえようとしてくれる)お話で、無条件に受け入れてもらえる安心感があります。文字に強くなる、読解力を磨くためだけに読書があるわけではないのです。読んで癒やされる、これが読書の原点。大人も同じでしょう? まずは、読書の喜び、本の楽しさを感じられるよう工夫してみてください。