引退セレモニーで3年生(右側)から下級生に手紙と写真が贈られる=阿南市の富岡西高校体育館

 運動系の部活動に励んだ今年の高校3年生は、どんな引退を迎えるのだろう。あるいは、もう迎えたのかもしれない。本来なら最後の舞台となる徳島県総体や全国総体が中止となった。代替大会を予定している競技もあるが、進学や就職に備えて引退を決めた人たちがいる。

 富岡西高校女子バレーボール部で、3年生の「引退試合」があった。3年生は選手3人、マネジャー1人。県総体の中止が決まり、3年生は悩んだ。「代替大会は8月になりそう。受験を考えれば、そこまでは続けられない」「でも、このまま何もなしに終わるのも…」。どうしようもない思いがこみ上げる中、一つの提案が持ち上がる。「部内で引退試合ができないだろうか」。外部コーチと顧問が「最後は、保護者の前でユニホームを着て試合をさせてあげたい」と考えた。学校側や部員も賛同し、開催が決まった。

3年生の最後となった引退試合

 

 6月21日、富岡西高校体育館に姿を見せたのは、ユニホーム姿の3年生、そして1、2年生。保護者も招待された。運営や審判を手伝うため、今春卒業した先輩も駆け付けた。監督を務めたのは、3年側(2年含む)が3月まで顧問だった先生、1、2年側が4月から顧問となった先生。大会では必ず用意する富西バレー部の横断幕も掲げられ、できるだけ大会に近い雰囲気をつくり上げた。

 試合は一進一退の攻防が繰り広げられ、選手たちは得点を挙げればガッツポーズし、ミスをすれば悔しがった。計2セット、懸命にボールを追った。

 試合後は、3年生と1、2年生が対面して引退セレモニーが開かれた。3年生が一人ずつ用意していた手紙を読み上げる。つらかったこと、部活動を通して得たこと、先生や家族への感謝、同級生や後輩へのメッセージ…。時に感情がこみ上げて言葉が詰まり、必死につなぐ。こぼれる涙は止まらない。

全員で最後の記念撮影

 ある選手は、こう話した。「毎日何のためにバレーをやっているか分からない時期がありました。ネットで、『部活なぜやる』『部活やめたい』と検索しても、納得する答えが見つかりませんでした。あの時、なぜやめなかったのか自分も分からないのですが、とにかく今やめたら一生後悔すると思うし、同級生に迷惑もかけてはいけないと思ったからだと思います。やめなくて良かったです」。そして続ける。「いろいろ苦しいことも悩んだこともありながら、総体が来るのは待ち望んでいました。なくなったのを聞いて、かなりショックを受けました。悲しくなりました。そんなときに、引退試合を企画してくれて区切りができました。おかげでバレーをやって良かった思える3年間でした。ありがとうございました」

 2年生の新主将が述べる。「今まで私たちを引っ張ってくださってありがとうございました。先輩たちと総体に出て試合がしたかったし、もっと思い出をつくりたかったです。来年は、私たちが先輩の分まで頑張ります。これからは受験勉強で大変になると思いますが、またバレーがしたくなったときは体育館に遊びにきてください。一緒にバレーができて楽しかったです」

 前顧問、現顧問、コーチが3年生に送る言葉を掛け、記念撮影で幕を閉じた。

 最後の舞台は、県総体のような華やかな雰囲気や大きな歓声はなかった。出場できなかった悔しさややるせなさは、消えないと思う。二度と来ない「高校3年生の夏」。汗水流した体育館で、仲間や後輩と共にプレーした「最後の試合」は、どんな思い出として心に刻まれるのだろうか。(卓)