事故現場付近で花を手向け、犠牲者を悼む松浦さんら=鳴門市大津町大幸

 「いつもにこにこしていて、周囲に気配りができる優しい子だった」。鳴門市大津町の徳島自動車道でマイクロバスに大型トラックが衝突し、16人が死傷する事故で突然、命を奪われた富岡西高1年森下汐音(しおん)さん(15)=海陽町宍喰浦=の友人や学校関係者らは26日、深い悲しみに沈んだ。

 森下さんの自宅を弔問した近所の80代男性によると、森下さんの顔には傷ひとつなく、今にも起き出すのではないかと思われたという。傍らには母親が無言で座り、森下さんを見守っていた。「あまりにつらくて、掛ける言葉が見つからない。母親は昨日から一睡もしていないのではないか」と声を落とした。

 関係者によると、森下さんは高校生の兄、小学生の弟との3人きょうだい。休日には、弟のボール遊びの相手をする姿が見掛けられた。近くの80代女性は「会えば必ずあいさつしてくれるいい子。これから、楽しいことがいっぱいあったはずなのに」と突然の悲報に涙ぐんだ。

 富岡西高のクラス担任で、森下さんが所属していた家庭科部の顧問も務める女性教諭(42)は、同僚に伴われて報道陣の取材に対応。森下さんは今月2日に同校で行われた中学生向けの体験入学では、部員や中学生らと一緒にランチの中華料理を楽しそうに調理していたという。

 「(事故前々日の)23日には、職員室に学校の課題を提出しに来ていた。たわいもない話で盛り上がったのが森下さんとの最後だった」。女性教諭の声は震え、嗚咽(おえつ)が止まらなかった。

 「阿南中学校では箏曲部に所属し、文化祭できれいな音色を響かせていたのが印象的」と話すのは同級生だった女子高校生(15)。「数学が得意で成績も優秀。性格は明るく友達も多かった」と振り返る。7月末に阿南駅で友人といるのを見たといい、「笑顔で声を掛けてくれたのをよく覚えている。天国で元気でいてほしい」と声を震わせた。


 ◆花手向け犠牲者悼む 事故現場で近隣住民ら

 徳島自動車道のバス追突事故から一夜明けた26日、鳴門市大津町の現場近くでは近隣住民らが花や飲み物を供え、亡くなった運転手と女子高校生の冥福を祈った。

 事故の通報者で、負傷した生徒らの介抱も手伝った松浦裕子さん(32)=パート従業員=は午後5時すぎに息子2人や知人らと現場を訪れ、花を手向けて静かに手を合わせた。松浦さんは「身近なところで事故が起き、人ごととは思えない。(女子高校生が犠牲になり)何とも言えない気持ち。親の立場で考えたらいたたまれない」と声を詰まらせた。

 現場付近では朝早くから、通り掛かった人たちが足を止め、事故の衝撃で歪んだ柵やのり面を心配そうに眺めていた。


 ◆県教委、5高校にカウンセラー派遣

 徳島県教委は26日、徳島自動車道の追突事故で死傷者が出た5高校の生徒や保護者、教職員の心のケアに当たるスクールカウンセラーを学校の要請に応じて派遣することを決めた。

 5校のうち、富岡西高には27日から1~2人を常駐させる。期間は9月8日までで、生徒らの状況に応じて延長する。城西、鳴門渦潮両高には9月1日から派遣するが期間は未定。徳島北、小松島両高とは時期を調整している。