写真を拡大 塾の運営を行うJAかいふの営農指導員の奥村航さん、生活指導員の升木由美さん。

 所得460万円。きゅうり農家として生計を立てる塾修了生1年目の収入実績を経営費と共にハッキリと記しているのは、「海部きゅうり塾」の募集チラシ。どれくらいの稼ぎがあるのか、農業の世界に飛びこむ人にとって最も気になる部分である。この数字を見て「所得の金額を出しているところに海部きゅうり塾の本気を感じた!」と入塾を決意した人もいる。

 「海部きゅうり塾」が立ち上げられたのは2015年10月のこと。古くから海部郡の美波町、牟岐町、海陽町は県内トップのキュウリ産地。冬場でも太陽の日差しをたっぷり浴びられる温暖な地域であるため、1年を通してキュウリの収穫ができる。最盛期には海部郡で120戸以上の農家が栽培をしていたが、高齢化や担い手不足が原因で現在は約30戸までに縮小。これらの問題を解決するために、JAかいふ・海部郡の3町・徳島県美波農業支援センターが連携した「海部次世代園芸産地創生推進協議会」が発足。海部郡へ移住者を募り、キュウリ農家へと育てる塾をスタートしたのだ。

 塾は、週1日の座学と週4日の実習で構成され、約1年で全くの初心者でもキュウリが作れる仕組みを整えている。座学では農業の専門用語からはじまり、土壌の性質、病気や害虫への対策、キュウリ栽培の工程、管理、出荷や流通の仕組みにいたるまで、農業の基礎と経営のいろはをみっちりと学ぶ。実習は通称・試験ハウスと呼ばれる海陽町の「次世代園芸実験ハウス」にて行われる。海部郡のベテラン農家や全国の先駆者のハウスから解析した温度、湿度、日射量、二酸化炭素濃度などのデータをヒントにマニュアルが作られ、長年この地域で行われてきた土耕栽培のほか、土の代わりにヤシガラを用いた養液栽培を学習できる。土耕栽培では、海部郡は10aあたりの収量が全国2位。これは栽培技術が高い証。限られた面積でも十分な収量を得ることに繋がってくる。実習では、経験豊富な農家から直接指導を受けながら栽培技術を磨ける。一方、養液栽培では、ハウス内の温度、湿度、二酸化炭素濃度をコンピュータのシステムを使って自動でコントロール。農家としての経験や勘が育つ前でも、数値を見える化することで効率的なキュウリの育成が可能になる。 

写真を拡大 土を使わない養液栽培のキュウリを収穫中。

 現在、6期生を迎えている「海部きゅうり塾」。これまで24人の塾生を送りだし、そのうち17人がキュウリ農家の道を進んでいる。入学金や研修費用は一切かからず、賃貸住宅に住む場合は月2万円まで家賃の補助が出る(塾生の期間のみ)点もありがたい。卒業後のサポートも手厚く、塾生が独立するために必要なレンタルハウスや農地を紹介してくれる。塾の定員が毎年変動するのも、就農できる環境が確保できた数に絞っているためだ。「外から呼びこんで終わりじゃないんです」と塾で指導にあたるJAかいふの奥村航さん(37・海陽町出身)。覚悟と熱意を持って、一人ひとりの農業人生を頼もしく支え続ける。7期生の募集日程は未定。相談や見学は随時受けつけており、個人の事情に合わせて入塾日や研修スケジュールを決めていく予定だ。

 

問い合わせ
海部きゅうり塾 
0884-73-1263(平日9:00〜17:00)