60年余り新聞を配り続けてきた梅野さん=阿波市市場町香美の自宅

 阿波市市場町の徳島新聞市場専売所で1955年から62年間にわたって配達員を務めてきた梅野和明さん(85)=市場町香美=が8月末で退職する。耳が聞こえにくくなり、バイクの運転が不安になったため。専売所を統括する徳島新聞社販売局は「60年以上務めた人は聞いたことがない」という。梅野さんは「この仕事があったからこそ健康で生きてこられた」と感慨深げだ。

 梅野さんは5人きょうだいの長男。実家の農業を手伝っていた10代後半、胃腸を患って体調を崩し、家業の手助けが難しくなった。それでも「働きたい」との思いから、22歳の時、面識のあった当時の専売所長に「新聞を配らせてくれ」と頼み込んだ。

 以来、休んだことはほとんどない。大雨でも雪でもバイクにまたがり、新聞を届けてきた。「配達や集金で人付き合いや礼儀を知った。たくさん勉強させてもらった」。26歳で結婚、2女に恵まれ、休日は趣味のカラオケを楽しんだ。

 市場専売所には20~70代の後輩が約20人。午前3時前に出勤し、率先して仕事に取り掛かる梅野さんの姿勢は模範になっている。

 梅野さんは「これまでやってこられたのは歴代の店主や仲間の支えのおかげ。時代は変わったが、みんなで協力して専売所を盛り上げてほしい」と話している。