避難の切迫度を5段階で示す「大雨・洪水警戒レベル」の運用が始まった昨年5月から今年5月までの1年間に、レベル4相当の全員避難を求める「避難勧告」を徳島県内12市町村が計29回出したものの、3割超の10回で避難者がゼロだったことが徳島新聞のアンケートで分かった。逃げ遅れで多くの人が亡くなった2018年7月の西日本豪雨を教訓に早期避難を促すため導入された指針ながら、自治体の担当者からは「定着には時間がかかる」との声が上がる。

 大雨・洪水警戒レベルは、気象庁や自治体が発表する大雨時の防災情報を、住民が取るべき行動を理解しやすいよう5段階(レベル1~5)のレベルと併せて発信する。市町村の出す避難勧告は、より切迫度の高い避難指示と同じ「レベル4」に区分し、全員に避難を求めている。

 昨年5月以降の1年間で徳島地方気象台と県からレベル4に当たる「土砂災害警戒情報」が出されるなどし、避難勧告を出したのは阿南市や那賀町など12市町村で計29回だった。このうち、避難者がいなかったのは美波町が3回、つるぎ町と佐那河内村が各2回、三好、那賀、東みよしの3市町で各1回だった。

 美波町の3回はいずれも赤松地区が対象で、延べ615世帯1393人のうち避難した人はいなかった。担当者は「雨量の多かった地域に民家が少なく、危険性を感じられなかったのではないか」と推測。「避難指示と避難勧告が同じレベル4に相当し、意味の違いも十分理解されていないように思う」と指摘した。

 「指定避難所に避難する方が危険と判断して自宅で待機したり、過去の経験から『自分は大丈夫だろう』と考えたりする人がいると考えられる」と説明したのはつるぎ町の担当者。避難勧告を一宇地区で2回、延べ863世帯1406人に出したが避難者はゼロ。町全域4266世帯8798人を対象に発令した時も25世帯33人にとどまった。

 全域に3回、延べ2817世帯6951人に避難勧告を出した佐那河内村。うち2回は避難者ゼロで、残りの1回も2世帯3人が避難しただけだった。担当者は「過去に大規模な土砂災害や風水害を経験していない地域のため、風雨の状況などを基に住民が自宅にとどまる選択をした結果」と理由を分析した。

 大雨・洪水警戒レベルの運用開始後に発令の実績がなかったのも12市町に上った。

 徳島大環境防災研究センター長の中野晋教授は「自治体は情報を出す場合の状況を住民に対し丁寧に説明する必要がある。避難行動は住民の負担となるため、一人一人があらかじめどんな状況で避難するかをルール化するなど、納得して行動できる環境づくりが大切だ」と話した。