写真を拡大 絶景のリバートレッキング。歩き、泳ぎ、時に滝に打たれたり飛び込んだり。

Trip 四国の川の案内人 牛尾健さん

剣山へと続く国道438号線、貞光川の清流に沿って蛇行する山道の途中に「Trip 四国の川の案内人」の看板がかかる一軒家がある。牛尾健さんはこの場所を事務所とし、“川旅”をテーマにカヤックやトレッキングのツアーを企画しているアウトドアガイドだ。

写真を拡大 川だけでなく登山ガイド、アウトドアコーディネーターなどとして幅広く活躍。貞光 から剣山、祖谷を経由するロングトレイルコース「祖谷街道トレイル」も考案。

活動場所は貞光川、吉野川がメイン。基本的に定員6人の少人数制で、春秋はゆったり川下りを楽しむカヤックツーリング、夏は渓流の中を歩いたり滝つぼに飛び込んだりするリバートレッキング、冬は剣山系の雪山体験や源流ハイキング…と年間通して参加者を大自然へと導いている。

 「兵庫県明石市の出身で海が近かったこともあって、子どもの頃から自然の中で遊ぶのが好きだった」という牛尾さん。川の魅力を知ったのは高校の夏休み。マウンテンバイクで四国を巡る一人旅に出た時、吉野川、仁淀川、四万十川の澄んだ美しさと雄大さを目の当たりにした。「これを仕事にするには?という思いが湧いてきたのはこの時」と振り返る。大学時代には、オーストラリアを単独自転車で横断した。西の街パースを出発し、砂漠や森林地帯を経て東部のメルボルンにゴール↗する約3000kmの大冒険だ。「旅の途中で山登りのツアーに参加しました。50代ぐらいの現地のおっちゃんがすごく楽しそうにガイドをする姿を見て、日本のアウトドアもこういう時代が絶対来る!と思ったんです。自分の将来像が固まりました」。その後、車の免許を取ったのを機にカヤックにのめりこみ、全国各地の川を旅するように。大学卒業後はアウトドアメーカーに入社し、大歩危でラフティングガイドとしてツアーの企画や運営に携わる。そして30歳の時に独立し、つるぎ町出身の妻・愛子さんと一緒に川旅をメインとする「Trip 四国の川の案内人」を立ち上げた。

写真を拡大 アウトドアガイドの牛尾健さんと牛尾愛子さん。夫婦で水をテーマに活動している。

 リバートレッキングツアーのフィールドとなる貞光川には、あらかじめ下調べをして厳選した約10コースを用意している。その中から、川のコンディションや「飛び込みたい」「泳ぎたい」「子ども向けがいい」といった参加者の要望に合わせ、コースを当日一緒に相談して決めるという柔軟なスタイル。

 下調べでは、まず地形図や航空写真を細かくチェックしておもしろそうな地形を探し、目星をつけてから現地調査に赴く。泳げる淵や飛び込みポイントを見つけるのはもちろん、安全にアクセスできるか、太陽は当たるか、携帯電話の電波は入るか、途中で川から上がれるエスケープポイントはあるかなど確認すべきことは多数ある。「新しいポイントを見つけるのは本当におもしろくて僕のテンションが上がりすぎてしまうので(笑)、冷静に判断するために2回行って決めるようにしてます」と牛尾さん。「安全第一で無理なく自然の中で楽しんでもらえるコースを考えてます。裏のテーマとしては、川の何が危なくて何が危なくないかを知ってほしいという思いがあります。どれくらいの流れだと足が取られて、どう足を置けば滑らないか…とか実際に体験してもらって、事故なく川遊びができる知識を持って帰ってもらいたい」。

 ツアー運営の勉強や情報収集を兼ねて、オフシーズンには夫婦で日本のみならず世界各地の山・川・海を旅する。一昨年はミャンマーの少数民族のお宅にホームステイしながら歩く64kmのトレッキングツアーに参加し、昨年は台湾最高峰の玉山(標高3952m)に登った。「現地の暮らしの中を行くのはおもしろい。いい発見をしたら、自分のツアーにも取り入れていきたいですね」。