滴翠クラブ9月拡大例会が8日、徳島市の徳島グランヴィリオホテルで開かれ、徳島新聞日曜付の1面コラム「成熟社会 どう歩く」を執筆している哲学者・内山節(たかし)さんが講演した。自然と文明の関係を深く考察している内山さんは「経済発展を求めた時代から自然や地域、人との結び付きを考える時代になってきた」と時代の変遷に触れ、「どんなふうに生きていけばいいのかを考える時期が来ている」と話した。
内山さんは日本社会の特徴として、片方で新しいものを取り入れながら、片方では古いものを受け継いでいる点を挙げ、「そうした歴史の厚さに、魅力を感じる外国人が増えてきていると感じる」と持論を展開。近年のインバウンド(訪日外国人旅行者)増加について「自国の社会が破壊してしまったものを、日本に求めてやってくる」と説いた。
さらに、講演先で見たサトウキビの収穫風景を紹介し、機械を導入している農家と、家族総出で鎌を使って刈り取る農家を「効率に追われている姿と、幸せな家族の景色」と表現。今の時代について「対立する二つの景色があり、一人一人が答えを迫られ始めている気がする」と述べた。
講演は約460人が聴講。熱心に聞き入っていたサツマイモ農家吉川裕之さん(43)=鳴門市大津町吉永=は「対立する二つの景色がある、という話に共感した。これまで以上にIターンしてきた人と交流を深めたいと強く思った」と感想を語った。