第92回アカデミー賞で韓国人監督ポン・ジュノの「パラサイト 半地下の家族」が作品賞、監督賞など最多4部門を受賞し、アジア映画初の快挙を達成したのは記憶に新しい。韓国は国を挙げて映画界を支援しており、日本映画とは一線を画した異質なエネルギーに満ちる怪作が次々と生まれている。ついにアカデミー監督となったポン監督の旧作「母なる証明」(2009年、キム・ヘジャ、ウォンビンなど出演)もそんな作品の一つだ。

(C)2009 CJ ENTERTAINMENT INC. & BARUNSON CO., LTD. ALL RIGHTS RESERVED

 舞台は物静かな田舎町。主人公の母親は、知的障害を抱える一人息子のトジュンと2人で暮らしている。ある日、女子高校生が何者かに殺され、トジュンが容疑者として逮捕される。警察も弁護士も頼りにならない中、無実を信じる母親は疑いを晴らそうと、たった一人で真犯人を探すため奔走する。

(C)2009 CJ ENTERTAINMENT INC. & BARUNSON CO., LTD. ALL RIGHTS RESERVED

 母親と息子のいびつな親子関係を軸に、終始不穏な空気をはらみながら展開していく。母親の愛情が美談ではなく、ある種の狂気として描かれており、韓国映画ならではの荒々しくもシュールな魅力を存分に感じさせてくれる。

 犯人を見つけるためのミステリーも見どころ十分だ。母親は常軌を逸した行動で、町に潜む狂った人間模様を明らかにしていき、事件の真相は二転三転する。伏線が随所に張り巡らせており、それらを回収しながら、衝撃的な結末へと転がっていく。

 韓国の国民的女優であるキムが主人公を務め、何かに取りつかれたかように真実を追い求める母親を怪演する。その狂気を秘めたまなざしが、見る者に奇妙な違和感を与えており、作品全体に異様な緊張感をもたらしている。(記者A)

【記者A】映像ソフト専門誌編集者、フリーの映画ライターを経て徳島新聞記者を務める。映画関連記事の編集や執筆、インタビュー、ロケ現場の取材などに長年携わり、1年間で365本鑑賞した年もあるなど、映画をこよなく愛する。

 

ブルーレイ版5000円/DVD版3200円(税抜き、発売・販売元 TCエンタテインメント)