離職後も残った業務をこなす高田さん=美馬市穴吹町の油屋美馬館

 新型コロナウイルスの感染拡大による雇用情勢の悪化を受け、バブル崩壊後に就職難に直面した「就職氷河期世代」が再び苦境に立たされている。経営不振を理由に解雇され、外出自粛で求職活動がままならない状態に。正社員の求人が急減する中、4月から始まった国の支援策も感染防止のために本格化していない。

 徳島県美馬市穴吹町穴吹の宿泊施設「油屋美馬館」が5月末、宿泊客の減少で閉館した。マネジャーの高田圭さん(42)=同市=ら正社員やパート従業員約20人が職を失った。「会社にはもう少し状況を見守ってほしかったけど、仕方ないのかな」

 公務員志望だった高田さんは専門学校を卒業後、県の臨時職員として働きながら採用試験に挑戦した。不景気に伴う公務員人気で門は狭く、夢を諦めざるを得なかった。運送会社を経て2006年に油屋美馬館に正規雇用された。

 翌年の開館時から、予約の受け付けや旅行会社との商談を担当。穴吹川の魅力を生かした宿泊プランをつくるなど、やりがいを感じながら働いてきた。「お世話になった恩返し」との思いから、離職後も取引先との契約に関する手続きなどを無償でこなした。

 今はハローワークで働き口を探している。経験が生かせる宿泊・旅行業は新型コロナの影響で先が見通せない。他の業種に目を向けても40歳未満に限る求人もあり、現状は厳しい。それでも「慌てずじっくり探したい」と前を向く。

 両親と3人で暮らす徳島市の40代女性は、短大卒業後に派遣やパートの仕事を転々とし、父の介護のため1年ほど前に離職した。正社員には賞与があり、休みが多い。同じ職場でも雇用形態で待遇が異なるのを見てきた。「派遣だから不幸だとは思わない。でも一度くらい正社員になってみたい」

 介護が落ち着き、正規雇用を目指して2月から職を探し始めた直後に新型コロナが流行した。疾患のある父に感染させるわけにはいかず、求職活動を控えざるを得なかった。7月に再開し「もう後がない。私たちの世代って、ずっとつまずき続けるのかな」とつぶやいた。

 徳島労働局によると、求職者1人当たりの求人数を示す有効求人倍率は、新型コロナの影響で急落している。4月の正社員の有効求人倍率(原数値)は前年同月を0・14ポイント下回る0・87倍で、23カ月ぶりに1倍を割り込んだ。5月は0・86倍となり、前年同月を0・17ポイント下回った。

<就職氷河期世代> 1990年代初頭からの「失われた10年」といわれる時期に大学や高校を卒業した、現在30代半ばから40代半ばの人たち。バブル経済崩壊後の景気後退で企業が新卒採用を絞ったため、就職難に陥った。非正規雇用やひきこもりが目立ち、ロストジェネレーション(失われた世代)の異名もある。2017年の総務省などの調査では、中心層に当たる県内の35~44歳は9万2千人。うち2千人が短期的な就業と失業を繰り返す不安定な状態で、2797人が長期にわたり無職になっていると推計している。