竜田揚げを一口かじって、しくじった、と思った。これもかなりうまいが、ここはもっと肉の味が分かる焼き肉だったか。シカ肉、それも野生なら、きっと癖があるはず、と構える必要はなかった
那賀町の剣山スーパー林道沿いにある観光施設・ファガスの森「高城」では、気軽にシカ肉が味わえる。名物のシカカレーは大盛りで800円。シカハンバーグにハンバーガー、定食など、値段はいずれも庶民派だ
管理人で料理人の平井滋さんが、わなで捕獲し、町の加工所で自ら解体する。「きちんと処理すれば、くさみのない、いい肉になる。肉の味が知りたいのなら、やっぱりステーキかな」
山を知り、その幸も知る平井さんの摘んだ山菜が、これまたうまい。「5月に入ったら、コシアブラがお薦めです」。タラの芽に似て「山菜の女王」とも呼ばれるそうだ
標高1300メートルの施設周辺は、これからが生命の躍動する季節である。アケボノツツジやゴヨウツツジが花を開き、ブナの新緑は目に痛いほどに輝く。見頃は黄金週間ごろから
命を頂いて生きている-。自然の真ん中でシカ肉を食べていると、少々厳粛な気持ちにもなる。スーパー林道に入れば未舗装。気軽にはたどり着けないけれど、一度味わってみて損はない。問い合わせは平井さん<電090(1578)3029>。