繁殖行動のため牟岐町沖に飛来する国天然記念物の海鳥カンムリウミスズメが、千羽近くいることが日米の合同研究グループの調査で明らかになった。沖合の櫂投島(かいなげじま)では、親鳥が卵を温める姿が初めて確認された。一行は町や県教委、環境省に調査データを提出し、環境保護対策などを求めている。
合同調査団は国内の研究者でつくる「海鳥保全グループ」(福島市)の大槻都子(くにこ)代表(50)らと、海鳥の生態環境研究を行う米国のNPO「カリフォルニア環境研究所」の学者2人。今月上旬、地元漁師の船で牟岐町沖を調査した。
一定の速度で船を進め、どの位置でカンムリウミスズメが見られたかをノートに記入。沖合1~3キロの海域や沖合の五つの小島を周回し、一部の島には上陸して繁殖行動中の親鳥の姿を確認した。
調査によると、沖合で日中は約500羽、夜は約千羽のカンムリウミスズメを計測。沖合7キロの無人島・櫂投島では、岩場の隙間で卵を温める姿を確認した。外敵に食べられた卵の殻も見つかり、辺りにはネズミのふんなどもあったという。
海鳥保全グループはこれまで、宮崎県や福岡県などの小島で環境調査を実施。大槻代表が、牟岐町にカンムリウミスズメが飛来していることを知り、現地調査に入った。
海鳥の研究者が牟岐町で生態環境調査をしたのは初めて。大槻代表は「牟岐町沖の島では卵を食べるネズミが生息しているとみられ、駆除を考えた方がいい」と訴える。
県立博物館の佐藤陽一学芸員は「希少生物を保護するには、繁殖地のデータが欠かせない。今回の調査により、海鳥の保護活動が前に進むことを期待したい」と話している。