消費者政策の研究や国際業務を担う消費者庁の「新未来創造戦略本部」が30日、徳島県庁に開設される。2017年7月から3年間の期限付きで設置していた「消費者行政新未来創造オフィス」の取り組みを発展させ、常設の拠点として新たなスタートを切る。県が目指していた全面移転は見送られたものの、消費者行政の進化や地方創生への貢献といった面で、さらなる成果が期待される。これまでの経緯を振り返り、今後の課題を探った。

 「消費者行政を前進させるために、多くの成果を上げたい」。衛藤晟一消費者行政担当相は7日の会見で、消費者庁が徳島県庁に置く恒常的拠点「新未来創造戦略本部」の開設日を明かし、こう語った。

 地方創生の目玉として2014年に打ち出された中央省庁の地方移転。県は「鳴門わかめの産地偽装問題に取り組むなど消費者行政に力を入れてきた」などとして15年、消費者庁の誘致に名乗りを上げた。16年には県庁と神山町での業務試験が行われ、17年7月、県庁に「消費者行政新未来創造オフィス」が設置された。

 この間、県は省庁が丸ごと拠点を移す全面移転を求めてきた。一方、全国の消費者団体や弁護士会は消費者庁の機能が低下するなどとして反対した。発足から10年と歴史の浅い消費者庁は他の省庁との調整機能が弱いとされ、「期待された役割を果たしていない」(消費者団体関係者)との考えが背景にある。

 16年の政府のまち・ひと・しごと創生本部決定では、消費者庁について「国会対応や危機管理、法執行、司令塔機能など対外調整プロセスが重要な業務は東京で行う」と明記された。オフィスでの試行を経てもこの考え方が崩れることはなく、19年8月に宮腰光寛担当相(当時)が徳島を訪れ、全面移転の見送りを発表した。

 「戦略本部は消費者庁も県も納得できる結論ではないか。箱の議論はもういい」。消費者庁幹部はこう話し、移転には庁内で強い反発があったことをにじませる。政府関係機関の地方移転はこれまでに42道府県が69機関で提案したものの、省庁単位での移転が決まったのは京都府の文化庁だけ。その文化庁も国会対応などは東京に残るため、移るのは庁全体の7割にとどまる。

 ただ、最近の社会情勢の変化が、局面を変える可能性を秘める。新型コロナウイルスの感染拡大により、大都市部の過密リスクが改めて顕在化したためだ。今月17日に政府が決定した「まち・ひと・しごと創生基本方針2020」では、東京一極集中の是正が強調された。

 コロナ禍で、テレワークやテレビ会議を取り入れる動きが一気に広がり、働き方は変化している。国会でもオンライン審議の議論が始まった。県幹部は「これまで消費者庁移転の課題とされてきたところが進展するかもしれない」と期待を寄せる。

 飯泉嘉門知事は「分散型の国土形成を行うべきだ。その先陣として全面移転をこれからも求めていく」と言う。戦略本部が岐路に立つ地方創生を変える契機になるのか、注目される。