部員を前に最後のメッセージを伝える板野高の和田監督(左)=鳴門オロナミンC球場

 新型コロナウイルス感染症の影響で、今夏の全国高校野球選手権徳島大会が中止となり、代替大会として実施される「徳島県高校優勝野球大会」が12日に開幕。熱戦を繰り広げている。甲子園という大きな目標は失ったが、これまで積み上げてきた成果を一投一打にぶつける球児たち。間近で接してきた監督たちは試合後の最後のミーティングで選手たちをねぎらい、新たな一歩を踏み出す背中を押す。「監督からのラストメッセージ」。切実な汗、後悔交じりの整列、抑えきれない涙、感謝の笑顔。いつもと変わらない夏が、そこにある。

 「もう少し長く、お前らと一緒に、野球がしたかった」。板野・和田哲幸監督はこみ上げる気持ちで途切れそうになる言葉を、必死につないだ。

 雨天で一日順延となった開幕試合。好投手3人を擁する鳴門渦潮から、相手と同じ9安打を放った。4回までは0点に抑え、堂々と接戦に持ち込んだ。だが本塁は遠く無得点。チームとして早々に、夏との別れを迎えた。

 コロナ禍による部活動休止で野球から離れた2カ月。他校もほぼ同じ状況ながら、空白期間はチームに重くのしかかった。監督自身もノックの感覚を忘れたほどだ。練習試合を通した実戦経験も積ませられない。

 3年生は10人。「残された時間をどう過ごさせ、どう高校野球を終わらせてあげるか」。悩みを抱えつつ迎えた大会だったが、必死に食らいつく部員たちに救われた気もした。「よくこの制限された環境と時間で頑張った。本当に上手になった」。成長を実感した。

 佐藤颯人主将は「みんながいなければ俺はキャプテンとしてやってこれなかった」と仲間に伝えた。大粒の涙を流す主将を抱きかかえるように和田監督は「最高のキャプテン。佐藤じゃなければ、チームはここまでまとまらなかった」とねぎらった。

 部のテーマは「愛される野球部になること」。それを通じ人間的に成長してほしいという意味も込められている。和田監督は本音を伝えた。「負けたのは点差だけ。ほかに負けたとこなんて一つもない」。