佐々木義登

 1次選考通過作品が決まった「第3回徳島新聞 阿波しらさぎ文学賞」(徳島文学協会、徳島新聞社主催)。選考に当たった徳島文学協会の佐々木義登会長(四国大教授)に寄稿してもらった。

 第3回となる今年は41都道府県から昨年を上回る465作品の応募があった。

 ジャンルは多岐にわたり、内容もバラエティーに富んでいた。人間の存在を深く掘り下げる作品、抽象画を連想させる詩的な作品、物語の力で読者を牽引する作品など、どれも小説の可能性と魅力を引き出していた。

 そんな中でも特に今年は、パンデミック(世界的大流行)を経験して変化した人々の暮らしを題材にしたものや、社会の在り方が変容した近未来小説など、これまで見られなかった切り口の小説が多数含まれていた。

 応募総数は昨年と比較して39作品増えた。新型コロナウイルスの影響で外出を控えなければならない状況だったことも一因であろうが、芥川賞作家の小山田浩子さんが最終選考委員に加わったことで新たな書き手が応募してくれたと考えられる。また第1回の受賞者の大滝瓶太さん、第2回受賞者の佐川恭一さんの、受賞後の活躍も大きかったのではないか。共に有名文芸誌に名を連ねるようになり、阿波しらさぎ文学賞の存在が全国的に知られるようになった。

 全体のレベルは第2回よりさらに上がっている。昨年の基準で選ぶと1次通過が当初の想定数をはるかに上回ってしまうため、残念ながら不通過とした優れた作品も多数あった。

 結果的に通過作は28作品とし、昨年より2作増やした。最年少は16歳、最年長は72歳。30歳以下が10人、50歳以上も6人おり、幅広い層から通過者が出た。

 今回の特徴は女性の1次通過者が増えたことだ。名前からの推察ではあるが、昨年と比較してほぼ倍増している。やはり小山田さんが最終選考委員に加わったことで、女性の書き手が多数応募してくれたのではないか。

 なお徳島県関連の書き手の応募数はやや減ったが、クオリティーは昨年より上がった。1次の通過者は9人で、全体の約32%である。その中には徳島出身で現在は県外に暮らす優れた書き手が複数いた。

 また10~20代の徳島の若い書き手の中に、驚くべき才能の持ち主がいることが分かった。これまで県内の文芸コンクールなどにも応募していなかった新しい書き手だと思う。阿波しらさぎ文学賞が才能の発掘の場になっていることを改めて感じた。

 受賞作の予想はこれまで以上に難しくなった。徳島県関連や女性の応募者から阿波しらさぎ文学賞が出るのか、10代や70代の応募者の作品がどのように評価されるのか、興味は尽きない。

 今後、芥川賞作家の吉村萬壱さんと小山田浩子さんを中心に最終選考会が開催される。阿波しらさぎ文学賞、徳島県関連の徳島新聞賞、25歳以下を対象とする徳島文学協会賞。今年も受賞作の発表を楽しみにお待ちいただきたい。

1次選考通過作品と作者

 「第3回徳島新聞 阿波しらさぎ文学賞」の1次選考を通過した作品と作者は次の通り。 (順不同、敬称略)
 「うたかた」高田九円(神奈川県)▷「去年の桜」三浦みなみ(吉野川市出身)▷「溺死ロック」洛田二十日(東京都)▷「私は今日まで生きてみました」北迫薫(東京都)▷「かったい道の木偶まわし」菊野啓(徳島市)▷「空白からそれぞれの永遠が開かれるまで」洸村静樹(埼玉県)▷「巻き貝眉毛砂の体」笠井カヤナ(埼玉県)▷「1/3(さんぶんのいち)」黒津正博(徳島市)▷「ジョン」五十嵐壮人(大阪府)▷「旅」北原由登(徳島市)▷「No place for young men」幸田羊介(鳴門市出身)▷「ミッション・ヴォルテックス」小林猫太(新潟県)▷「檻」なかむらあゆみ(徳島市)▷「朝顔と三味線と、そしてスダチ」和泉真矢子(兵庫県)▷「夢見る約束」川西晴登(阿南市)▷「引力」海坂恵(東京都)▷「ぞめき立つ冬」藤城孝輔(岡山県)▷「虹のうず、青のうず」張文經(東京都)▷「石になる」宮月中(徳島市)▷「いのちの水面」日隅すずり(香川県)▷「ちちぢち」蜂本みさ(京都府)▷「羽の胎児」末素生児(大阪府)▷「あまいがきらい!」蕪木Q平(神奈川県)▷「牛打ち坊」宮地辰明(徳島市)▷「Ta-p-ca-a-ra-i-que tick!」大崎新(鳥取県)▷「水と話した」冬乃くじ(東京都)▷「子泣き爺に魅せられて」益岡和朗(埼玉県)▷「開かれた未来」金村亜久里(神奈川県)