写真を拡大 夕食はジューシーな鶏の唐揚げや鶏釜飯が主役。阿波尾鶏の養鶏を営む岸家だからこその味でもてなす。

岸里枝さん(70・上勝町出身)

 緑のグラデーションを描く表情豊かな自然に抱かれた農家民宿「山挨(やまあい)」。上勝町生実の標高400メートルの山間にあり、晴天の日は山々を見晴らす眺望が、雨が滴る日には一帯を霧が覆う幻想的な風景が広がる。この風光明媚な場所で何もしない贅沢を味わうもよし、近くの山犬嶽を散策したり、勝浦川で遊んだりアクティブに過ごすもよし。苔玉づくりや染め物など宿の体験プランに挑戦してみるのもいい。「どういう風に過ごしたいかを聞いて、目的がある場合は案内するし、それが終わったらくつろいでもらえるように、あんまり立ち入らんことを心がけとんよ」と宿主の岸里枝さんは朗らかに話す。

 夫の岸衛さんと民宿を始めたのは2012年のこと。以前は夫婦で阿波尾鶏の養鶏をしていたが、息子が手伝ってくれるようになり、里枝さんには時間の余裕ができた。ちょうどその頃、葉っぱビジネス「いろどり」の現場や、「日本の棚田百選」に選ばれた同町樫原の棚田を視察する人が増えてきたことで、町内で宿泊できる施設が求められていた。里枝さんは「時間も場所もあるし、やってみよかって始めたんです。何もしよらんかったら退屈でぇな」と茶目っ気たっぷりに言う。

 開業当初は自宅母屋の空き部屋だけを使用していたが、現在は2部屋の個室と相部屋が2室で最大9人まで宿泊できる。年々改築や増設をして、今や所有する敷地一帯で宿泊客をもてなす。衛さんの両親がかつて営んでいた椎茸栽培のハウスは、団体の宴会を受け入れるほど広い食堂に改造。また、資材置き場だった倉庫は囲炉裏を配した憩いの場に。壁には子ども用のボルダリング器具が取りつけられ、プレイルームとしても好評だ。「1年前はできんかったお子さんが次の年は上まで登れるようになったりしてね。そういう成長を見るのも楽しみ。開業から毎年夏休みに来てくれるお客さんもいるんです」と顔をほころばせる。

 何より喜ばれているのは離れの薪風呂。家族4、5人が一緒に入れる広さで、壁一面の窓枠が額縁となって山景色を収める。「満月の日は湯船に月が落ちるんよ」と里枝さん。たゆたう湯面に浮かぶ月、ロマンチックな夜を想像するだけで心躍る。

写真を拡大 山々を借景にしたお風呂。「気持ち良かった~って出てくるお客さんを見るのが嬉しい」と里枝さん。

 里山暮らしが体験できるメニューは様々あり、例えば草餅作りなら、おくどさん(薪のかまど)で餅米を蒸して臼と杵でつく昔ながらの方法を里枝さんが手ほどきしてくれる。山菜採りや釣りに連れて行ってくれたり、庭の池にアメゴを放してつかみ取りをさせてくれたり。山犬嶽ハイクを希望すれば登山口まで送ってくれる。

 「こんな田舎に居ながらにして人との出会いがある。ほんまにありがたいこと。62歳で始めた民宿が今は生きがいなんよ。老後の自分の居場所が見つかった感じかな」。やりたいことはいっぱいある、と里枝さん。「息子には“母さん、歳が足らんわ”って言われるんやけどな。いつか裏の杉林にツリーハウスが造れたらいいなあ」。まだまだ山挨は進化しそうだ。

料金
1泊2食つき1人6000円
(最大9人宿泊可)

体験メニュー
アメゴのつかみ取り500円、草餅作り500円など。予約時に要相談

住所=上勝町生実下野81-1
0885-46-0356
(1週間前までに予約)
チェックイン 午後から希望に応じて対応
チェックアウト 10:00

駐車場:あり
キッズスペース:あり    
多機能トイレ:なし
開設:2012年    
Wi-Fi:なし