徳島市の新町西地区再開発事業の地権者でつくる再開発組合が、権利変換計画の不認可処分の取り消しと計画認可の義務付けを市に求めた訴訟の20日の判決で、徳島地裁の川畑公美裁判長は「市に裁量の逸脱や乱用はない」と指摘し、組合側の訴えを退けた。組合は月内に総会を開いて控訴するかどうかを判断する。
権利変換計画の認可・不認可の是非に司法判断が下されたのは全国初。訴訟は▽市の裁量がどれだけ許されるか▽市の不認可処分(2016年6月23日付)に裁量の逸脱や乱用はあったか-などが争点となった。
川畑裁判長は判決理由で、市長には認可・不認可の判断で、法の規定との適合性や実現可能性などを考慮する「一定の裁量」があると認定し、「裁量の余地はない」とする組合側の訴えを退けた。
その上で「法的に事業を中止できなくなる権利変換期日は来ていない。事業は中止できる」「社会情勢の変動などで政策が変更されることは、住民自治の原則からすれば当然」などと指摘。不認可処分に裁量の逸脱はないとする市の主張を認めた。
事業の頓挫により、調査設計費などで5億円余りの借金がある組合に損害が生じる可能性にも言及したが、市長が組合との協議で補償の意向を示していることなどを考慮し、裁量逸脱の理由にはならないとした。
再開発事業を巡っては、16年3月の市長選で白紙撤回を掲げた遠藤彰良氏が当選したことで、市は事業推進から撤退に方針を転換。新町西地区の土地・建物の価値を再開発ビルの床面や金銭に置き換える権利変換計画を不認可処分にし、着工前の最終段階まで進んでいた事業は止まった。組合は事業の実施を求めて提訴していた。