事件に同情の余地はない。夜、高校生を呼び出し、無理やりキスをする。46歳にもなった大の大人の卑劣な行為が、どれだけ子どもの心を傷つけたか。強制わいせつ容疑で、人気グループ「TOKIO」の山口達也メンバーが書類送検された

 テレビのレギュラーを何本も抱えた売れっ子で、東京五輪のPR役も務める。当方もファンというほどではないにせよ、好感を持って出演番組を見ていた。爽やかな印象は見せかけだったのか。裏切られたような気分だ

 高校生にしてもそうではないか。いかにも怪しい人なら、最初から出掛けて行きはしない。信用していたのにどうしてと、やりきれない思いでいっぱいだろう

 きのうの記者会見で、山口メンバーは何度も頭を下げ、涙ながらに謝罪した。気づくのがいささか遅かった。世の中には取り返しのつかないことがある。事件との関連は分からないが当時、酩酊(めいてい)状態だったという

 地位も名誉もある人間がどうして、といった出来事が相次いでいる。それには多くの場合、小さな芽があった。気づいた時に摘んでおけば、大事には至らなかったのだろうけれど

 事が起きて初めて悟る人を古来、愚か者と呼ぶ。地位や名誉にかかわらず、誰もが愚か者の種を持っている。そう心していれば、落とし穴の一つ二つ、避けて通れるかもしれない。