日露戦争時に立木写真館(徳島市仲之町1)が撮影した写真をきっかけに、同館常務の立木さとみさん(57)が日ロ友好をテーマにした講演を続けている。写真は元ロシア兵捕虜の子孫が所持しており、日本人の子どもと一緒に笑顔を見せる捕虜を写したものもあった。捕虜が人道的に処遇されていたことが分かり、「国同士は争っても人と人は傷つけ合わなかった」と訴えている。25日から初めてロシアに渡り、友好の大切さを伝える。
写真は、香川県の善通寺収容所にいた元ロシア兵捕虜パベル・ジャンダロフさんが約20枚残していた。パベルさんのひ孫で写真家のアリョーナ・ジャンダロバさん(28)=イヴァノヴォ在住=が昨年4月、この写真を手掛かりに立木写真館に持参。このうち数枚を、同市にあった立木写真館の分館が1904、05年ごろに撮影したことが分かった。
パベルさんの写真から、戦時下の状況が明らかになり、立木さんは日本人と捕虜の関係に興味を抱くようになった。独自に調査したところ、道後温泉でくつろいだり、料亭でビールを飲んだりする日本各地の捕虜の様子を伝える写真や資料などが見つかり、捕虜が厚遇されていたことを知った。
立木さんは、写真が縁で始まったアリョーナさんとの交流の経緯について、昨年9月から県内外で熱弁を振るっており、好評を得ている。活動を続けるうち、ロシアでも講演して友好を深めたいと思うようになった。在サンクトペテルブルク日本総領事館から快諾を得られたため、自費で渡航することにした。
27、28の両日にサンクトペテルブルクにある国立図書館などで、30日にはパベルさんの故郷だったミハイロヴォの公会堂で、それぞれ市民を対象にロシア語に翻訳した資料を交えて講演する。
立木さんは「パベルさんの写真が100年以上の時を越えて人をつなぎ、縁を結んだ奇跡をロシアの方にも知ってもらいたい。講演を通じて平和や友好の大切さを訴えることができたら」と話している。