県内で最大級の売り場面積を持つイオンモール徳島は、買い物客の流れを変え、県内流通・小売業界に厳しい競争をもたらした。人口減少、根強い消費者の節約志向といった逆風も吹く中、この1年をどう受け止め、顧客獲得に向けて今後どのような戦略を練っていくのか。県内流通各社を取材した。
 

県内最大級の900席を有するフードコート=徳島市南末広町のイオンモール徳島


来館者750万人 巨大店客の流れ変え

 来館者数は750万人に上り、売り上げもおおむね予想通りだった―。27日にグランドオープンから1年を迎える徳島市南末広町の大型ショッピングセンター・イオンモール徳島。楢原琢馬ゼネラルマネージャー(GM)は、好調な集客をアピールした。

 開業前に見込んでいた年間来館者は700万人。県都初のシネマコンプレックス(複合型映画館)が人気を集めたほか、中核店舗の総合スーパー・イオンスタイル徳島などの大型テナントや、3~5階に約30店を集めた飲食ゾーンが強みを発揮し、目標を上回ったという。

 楢原GMによると、メインターゲットとしている30、40代の家族連れを中心に、若者からシニアまで幅広い年代層が訪れている。イオンスタイル徳島では、1階の食品フロアが終日にぎわう。漁獲された魚を船一隻分買い付ける「一船買い」の鮮魚コーナーや産直市などの生鮮食品に加え、量り売りの総菜などの利用も多い。

 楢原GMは「都市部でスーパーや映画館などの大型テナントがそろっているのが、集客につながっている」と分析する。周辺に住宅やマンションが並ぶことから、週末だけでなく普段使いの店として利用している人が多いとみられる。

 四国経済産業局がまとめた県内百貨店・スーパーの2月の販売金額(30店)は、飲食料品は40億8399万円で前年同期(28店)より9・1%増えた。既存の店舗だけをみると前年同期よりも1・7%減っており、イオン出店の影響の大きさがうかがえる。

 イオンスタイルの原田宣尚店長は「衣料品や日用雑貨なども、いい物はよく売れるということがこの1年で分かった。流行を先取りするような商品をもっと発信、提案していきたい」と手応えをつかんだ様子だった。

 ただ、モール全体を見渡せば、入居する約150の専門店は業種や店舗によって明暗が分かれる。固定客の獲得に苦戦している店舗も少なくない。ある専門店の従業員は「週末は大勢が訪れるが、平日もにぎわっているのはイオンの直営店と一部の店だけ」と漏らした。

 初年度は目標を上回る来館者数を確保したとはいえ、競合店も手をこまねいているわけではない。2年目はいかに販促を強化していくのか。楢原GMは「大型テナントの魅力を高めて集客力を維持するとともに、接客やサービス水準の向上に努めたい。立地を生かし若者やシニアへのアプローチも強化していく」としている。