新型コロナウイルスの影響で、徳島市の阿波踊りは戦後初めて4日間全てが中止となった。演舞場の観客数が減るなど、これまでの開催スタイルが曲がり角にきている阿波踊り。「ぞめきの響かない夏」をピンチでなくチャンスと捉え、今後の在り方を一度立ち止まって考えたい。踊りは今後どうあるべきか。

海外にも広がる仕掛けを 阿波おどり実行委員長・内藤佐和子氏(徳島市長)

内藤佐和子市長

 この時期、いつもであれば街中のあちこちでぞめきが響き、踊りの雰囲気に包まれてくるのに、今年は夏が来ているという感覚が正直ない。今までに経験のない状況で、私としても本当に寂しい。

 期間中は100万人を超える人出が見込めるため、宿泊や飲食、交通など地域経済に与える影響も大変大きいと認識している。市や実行委としては今年の夏を少しでも盛り上げるため、踊りのPR動画を作って公開したり、市中心部の商店街などへちょうちんを貸し出したりして、来年につなげようと取り組んでいる。

 ワクチンの開発や供給状況にもよるが、新型コロナウイルスの感染リスクを考えると、来年以降の踊りはこれまでのような方法で開催するのは難しいと思う。例えば演舞場の桟敷席は人数制限でソーシャルディスタンス(社会的距離)を保てるが、歩行者天国となる街中はどうするのか。踊り子の間隔や掛け声などにも気を配らなければならない。各分野のさまざまな意見を聞いて感染対策を考え、実証実験を兼ねたイベントの実施などを検討する。

 400年以上続いた徳島の伝統芸能であり、次の世代に継承していかなければならない。魅力はまだまだ伸ばせる。7年ほど前に海外旅行をした時、たまたま阿波踊りの音楽を流してくれたことがあった。何も教えていないのに、その場にいた人たちが「こんな感じかな」というノリで踊り始めた。にわか連のようにどこでも自然発生的にできるのも阿波踊り。みんなで楽しく踊れるのが大きな魅力であり、だからこそ全国へと広がった。日本だけでなく、海外にももっと広がる仕掛けを考え、徳島を聖地としてみんなが目指す場所にしていけばいい。そうしないといけないと思う。

 今年の夏は非常に残念な思いをされた人がたくさんいるだろう。踊り子は本番だけでなく、感染拡大を防止するために練習を自粛していると聞いている。新型コロナは全国で拡大しており、現段階で収束の見通しは立たない。しかし、「ウィズコロナ」時代における阿波踊りのモデルを検討し、来年は安心・安全に開催できればと思っている。皆さんと徳島の阿波踊りを心から楽しみたい。

「密」解消し来年必ず開催 運営事業体総責任者・前田三郎氏

前田三郎氏

 今夏の徳島市の阿波踊りの中止は仕方ないという思いだ。新型コロナウイルスの感染拡大は、日本中の誰もが初めて味わう事態だから。昨年初めて運営に携わって分かった反省点を、今夏に修正できないのは非常に残念だけど。

 来年の開催に向けた課題は多い。阿波踊りは全国各地から人が集まる一大イベント。まず「観客」「踊り手」「街」の「3密」をどう解消していくか、対策を考えなければ。観客の密を避けるには演舞場の数、形状、客同士の距離感が適正かどうか検証が必要になる。検温や消毒を徹底するのはもちろん、無料演舞場での桟敷席の必要性も検討しなければならない。

 雑踏の人たち全員に感染チェックなんてとてもできないし、コロナ禍でどういった開催が可能かを、みんなで議論していくことが重要だ。昨年までの状況に戻すのは誰が考えても無理。当面は元通りの開催スタイルは取れない。

 阿波踊りは1年のうちでたった4日間だけど、この4日間が徳島の財産だとみんなに誇ってほしいし、大切にしてほしい。例えば観客が感染対策を心掛けることで感染リスクは低くなり、開催の安全性は高まる。一人一人の意識付けも今後は大切になってくる。

 コロナ禍に対応した新しいビジネスモデルは今のところ考えていない。踊り事業の収益構造はチケット収入に頼るべきだと思っている。ウェブを活用した方法もいろいろ考えてみたが、魅力発信は可能でも収益性を求めるのは難しい。スポンサーが付いたとしても、その収益はあくまで余得と考えて地域に還元する仕組みを作りたい。

 昨年は台風の影響で4日間のうち2日間が中止となり、1億1千万円もの赤字が出た。今年は開催できず、事業委託期間の2023年度までに多額の赤字を取り戻すのは不可能な状況だ。それでも、日本最大級の祭りである阿波踊りに携われるのは名誉なこと。残りの委託期間をプロモーターとして意地でもやり切りたい。後悔は全くない。

 来年はどれだけの規模で運営できるか分からないけど、みんながにこやかに参加できる状態に戻すのがわれわれの役割。絶対に開催する。頑張る。