「戦時下の暮らし 記憶のかけらを集めて」は、全国の地方新聞やNHK、ウエブメディア計12社によるキャンペーン「#あちこちのすずさん」との連携企画。7月に投稿を呼び掛け、集まったエピソードを紹介する。

 

徳島県阿波市市場町・匿名・女性(60)

 1937年生まれの母が、「小学生の頃に靴が配給されてうれしかった」と話してくれたことがある。母の足の薬指は両足とも中指に乗るような形になっていた。草履を履くとそれが見えて嫌だったそうだ。靴の配給の順番はなかなか回ってこず、やっと手に入ったときは「ほんまにうれしかった」と。

 母は5人きょうだいの長女。両親に頼りにされるしっかり者だったが、家は学校から遠く、山道を草履で通学する姿を想像すると切ない。戦後をたくましく生き抜いた母は15年前に他界した。私は今、草履を履いた少女の母を抱きしめたい気持ちになる。