「戦時下の暮らし 記憶のかけらを集めて」は、全国の地方新聞やNHK、ウエブメディア計12社によるキャンペーン「#あちこちのすずさん」との連携企画。7月に投稿を呼び掛け、集まったエピソードを紹介する。

 

徳島県阿南市福村町・桜木ツルエ(89)

 1945年、私は小松島高女の生徒だった。徳島大空襲の日から半月後、宿題もなく暇な私は阿南の浜で青年団の軍事演習を見ていた。そのとき、上空に機影が。「グラマンだ!」と思い、岩山に飛びついた。そのとき、一人の男性が私の背に覆いかぶさってきた。耳をつんざくような射撃音が去ると、その男性は「どうもないか?」と優しく言った。私は顔も上げられず、コクリとうなずくのが精いっぱい。体を張って守ってくれたのに、「ありがとう」の一言も言えないまま別れた。

 あの人は誰だったのだろう。今もお元気だろうか。顔も知らないあの人が、私の初恋の相手だったのかもしれない。