「戦時下の暮らし 記憶のかけらを集めて」は、全国の地方新聞やNHK、ウエブメディア計12社によるキャンペーン「#あちこちのすずさん」との連携企画。7月に投稿を呼び掛け、集まったエピソードを紹介する。

 

徳島市川内町・田村龍子(87)

 女学校に通っていた1945年のある日、養蚕農家に手伝いに行った。蚕の飼料となる桑の葉をもぐ作業があった。ふと、葉の先に赤く熟した実を見つけた。頬張ると甘酸っぱい。甘いものに飢え、おなかもすかせていた私は、この天からの贈り物に驚がくした。すぐに幼い弟と妹の顔が浮かび、夢中でハンカチに実を包み、ポケットに忍ばせて持ち帰った。

 が、家に着くと、桑の実はつぶれ、ハンカチは真っ赤。洗濯をしても落ちない。染みだけが残った苦い記憶は忘れられない。