「戦時下の暮らし 記憶のかけらを集めて」は、全国の地方新聞やNHK、ウエブメディア計12社によるキャンペーン「#あちこちのすずさん」との連携企画。7月に投稿を呼び掛け、集まったエピソードを紹介する。

 

徳島市下町・田中幸子(79)

 ある日、母がラジオの前に座った。私も座らされた。「ああ、戦争終わったんやな。天皇陛下さんの話でよ」。日本が負けたと聞いてもよく分からず・・・。

 鮮明に覚えている瞬間がある。遊んでいると、「ただいま」と知らないおじさんが玄関に立った。走り寄った母に、「もんて来たぞ」。パナマ帽にリュック、くるくる巻いたゲートル、汚れた靴。「お父さんでよ。これからはお父さんと言うんでよ」。母に言われても、理解の難しい私だった。

 その後、何年もたつのにお酒を飲むと、三菱造船の機関室に勤めていた話をする父。兵隊の食糧の輸送などで何度も船に乗ったそうだ。「焼夷弾を落とされ、海中でサメに襲われたときはなあ」。いつもの話の始まりだ。

 そんな父も母も今はいない。子どもたちには何も話していない。