演舞場がなく人影も少ない両国本町商店街=12日午後8時ごろ、徳島市両国本町

 お盆期間の街中からぞめきが消えた―。新型コロナウイルスの影響で中止になった徳島市の阿波踊りが本来なら開幕するはずだった12日夜、市中心部は人通りがほとんどなく、静寂に包まれた。厳しい現実を改めて突き付けられた飲食関係者は落胆し、住民の間にも喪失感が広がった。

 繁華街にあり、代表的な演舞場だった紺屋町は、例年の風景とは一転、ちょうちん飾りや露店は見られない。いつもなら踊りが始まる午後6時を過ぎても道行く人はまばら。祭りの風情と喧噪が失われ、大きく様変わりしていた。

 両国本町商店街では、赤と黄のちょうちん約70個が店の軒先で揺れていた。踊りがなくても街を盛り上げようと、振興組合が市から借りて七つの店が飾った。疫病を払うとされる妖怪アマビエのイラストや、「阿波おどり来年まで待ってます」のメッセージがぶら下がる。

 「少しでも前を向かないと」。振興組合理事長で喫茶店経営者(57)は、店を開いた36年前から活気ある踊りを見続けてきた。ちょうちんが風情を醸しても、人通りは少ない。「泣けてくるね」

 商店街にある居酒屋の店長(33)は「お客さんの入りは昨年の10分の1ほど。盆になれば少しは人出が戻ると思ったけど、期待が外れた」と言う。

 演舞場が設けられるはずだった藍場浜公園や徳島こども交通公園は明かりが少なく、輪踊りやにわか踊りでにぎわう新町橋周辺も静まり返っていた。同市の男性(88)は「ぞめきが聞こえないとお盆が来た感じがしない。コロナに徳島の宝を奪われ、街の灯も消されてしまった」。

 一方、踊りの開催に否定的な住民からは安堵の声が上がった。同市の男性(72)は「交通規制のせいで自由に家に出入りできず、うんざりしていた。夜遅くまで騒がれるのも嫌だったので、静かになってうれしい」と話した。