春先、ちょうど応募作を書こうと思い始めた時期に全国に緊急事態宣言が出され、作品をコロナと切り離せなくなった。「今、この時代を自分なりに表現して残しておかなければ」。そんな強い思いで執筆した。

 阿波しらさぎ文学賞へは初の応募。過去2回の受賞作を徳島新聞電子版で読んで注目していた。「既存の枠にとらわれない冒険心にあふれた、自由で懐の深い賞だと感じた。希望を持って挑戦したが、まさか自分の作品が選ばれるとは」と驚きを隠せない様子だ。

 受賞作「あまいがきらい!」の中心人物は小学生たち。子どもたちは直接、言葉にすることはなくても、敏感に時代を感じ取っている。それを大人の目線ではなく、子どもの生の声のままつづっている。学童保育の児童支援員をしている経験が役立った。

 モチーフにしたのは、金時豆が入った甘辛いお好み焼き「豆玉焼き」。事前に徳島を訪れて、題材集めをしようと考えていた。コロナの影響でそれができなくなり、インターネットで徳島関連の話題を探していて見つけたソウルフードだ。

 生まれも育ちも横浜市。心の病気を患い、上智大文学部を中退した。小説を書き始めたのはその頃からだ。文学賞に応募したり、ネットで作品を発表したりしてきたが、受賞は今回が初めて。「創作を通して多くの仲間ができ、プライベートでの大切な友人もできた」と声も弾む。

 筆名の「蕪木」は「スーパーカブに乗って旅をするのが好きで付けた」。横浜市のマンションで1人暮らし。31歳。