【沸き上がる卵】産卵のピーク。海底から次々と雪が舞うようかのように卵が沸き上がってくる。

 新月の夜、徳島県海陽町の竹ケ島海中公園の海底。ライトの明かりにサンゴ「エダミドリイシ」の群生が浮かび上がった。

 午後9時前、小さなほこりのようなものが海中を舞い始めた。見る間にその数が増えていく。海中からどんどん沸き上がってくる感じだ。サンゴが一斉産卵を始めた。

 神秘的な光景に息をのむ。産卵は30分ほどで終了。海の表面は放たれた卵でピンク色に染まり、波の動きで筋状になっている。

 

 毎年の自然の営み。途方もない数の卵の中で、サンゴとして成長できるのはわずかだそうだ。ほとんどが魚や他の海洋生物に補食される。生まれた瞬間から厳しい生存競争にさらされているというわけだ。

 エダミドリイシなどのサンゴは海中の微生物を食べて暮らす。サンゴ礁は海水を浄化し、共生する藻類とともに二酸化炭素を吸収して酸素を作り出すことから、海の森とも言われる。大切にしなくてはいけない場所だが現実はどうなのか。海中を舞う卵を見ながら思った。

【竹ケ島海中公園】竹ケ島を中心に広がる入り江。この海の水深3~5メートルの場所でエダミドリイシの一斉産卵を見ることができる。
【地球?】紫外線ライトで海底を照らすとサンゴが白く光る。青い水に浮かぶ模様は、宇宙から見た地球のように見える。
【サンゴ礁】エダミドリイシの群生が作り出すサンゴ礁。その名の通り緑色で海の中に育つ森のようだ。
【調査】エダミドリイシの保護は関係者の地道な努力によって支えられている。長期にわたって調査されているが、その生態にはまだ謎も多いという。
【水面を埋める】一斉産卵で浮かび上がった卵が水面を覆い、ピンク色の粉をまいたかのようになる。