世界で一番めんどいのは卒業式の練習なのはだって五年はまだ卒業しないのに、立ったり歌ったりさ?まぁ歌は口パクだけど。だるみーってサリとしゃべってたら怒られるし。明日から急に休校で今日しか練習できなくて先生たちイラついてんだろうけどうざいわーって二時間してやっと終わったとき、たけチにコクられてまじでビビる。
「中川が好きとか思う、六年とかになったら付き合いたい」
 体育館から戻るときのろう下でたけチは言ったから通りすぎてくみんなに見られてまじではずいってか「なんで六年?今じゃなくて?」って聞いたら「えっと、五年とかは早いかもだから。六年とかになったら返事教えて」だって。てか「とかってなんだし」って言ったらたけチは「おねがい!」って走ってっちゃった。どうせ同じ教室戻んのに。そんで教室戻ったらやっぱサリやはるながひそひそ見てきて最悪+宿題大量でなえまくり。小森なんかプリントを紙ひこうきにして怒られてた。

 休校中はダンスや自どりスキル上げたりゲームできるけど大洋がやらせてってうるさいけど楽しいからずっと休みでいいわって思ってたら一週間した夜ごはんとき、休みがのびたって学校メールが来た。横浜は終業式まで休みで卒業式も五年は行かなくてよくって卒業生の親も出れないみたいで、かわいそうにってママは言ったけど、うちは卒業式出なくていいのはラッキーすぎるしもっと遊べるし最高だったけどパパとママはどっちが仕事休むかもめてた。ふたりともなかなか休めないらしい。子どもだけで留守番できない?ってパパは言ったけどママは心配だって反対したけどうちは大洋見るのはめんどいけどべつに留守番くらいできるけど?ってこっそりパパ応援してた。なのにさ、いきなし「実家に預ける?」って言い出して、うわー。大洋はよろこんでたがうちはやだ。けどパパは実家のが安全ていう。「どうせ春には帰る予定だったろ。正月も帰れなかったし、したらおれもゆうきゅうとって……」とか言ってる途中で、だめ!ってママが叫んだ。
「あなたが帰りたいだけでしょ。感せんだってこれからがーって増えるかもなのに。目に見えない津波かもしれないのよ。ねんにはねん!」
 ママの圧がやばくてパパはしょんぼりあきらめた。そんでママ休みとパパ休みと留守番があったけどランキング的には留守番がダントツ1位に決まってた。だってゲームもユーチューブもなんでもアリだ。2位はまぁママの日かな。でもママはこわい顔でスマホいじってるしテレビはずっとニュース。トイレ出たしゅん間「手あらい!」ゲームより「勉強!」ってママよりパパのがぜんぜんましで、大洋とたたかいごっこはうっさいけどうちがめんどう見なくてよくて楽だけどなんで3位って、お昼ごはんがありえない。パパはおこのみやきばっか作ったが、その味がやばい。だってパパのおこのみやきは甘いのだ!キントキ豆を入れるから!砂とうでにた豆と千切りキャベツが大盛りで、そんでソースかけると甘みとしょっぱみが合体してベロがこんがらがる。「なんで豆玉なんか作んの」って言ったら「パパんとこは昔から塩がよくとれて」ってそんなんわかってる!塩とれて逆に甘党が多いみたいのはあっちはなんとお正月のちらしずしにも甘い豆が入ってるのだ!じゃなくて「なんでうちで作んの」「だって今年はしばらく帰れなそうだろ?せめて味だけでも思い出せたら」ってうちはべつに思い出したくない。毎年夏冬行くけど大きいばっかの川とお城のないお城公園があるくらいでネットさせてくんなくて退屈だし、おどりのお祭はパパや親せきばっかテンション上がって大洋もはしゃいでおどるけどうちは逆になえる。あと昔すごい地しんがあった年がママが横浜もあぶないって泣いてみんなでむこうに一年住んだことがあんま覚えてないけどべつに楽しい思い出じゃない。
 とにかくキントキ豆の甘い味はむこうを思い出すからいやで大洋がいやがったらパパもあきらめるかもと思って、まずくない?ってつっついたけど大洋はばくばく食べてたからパパは「次はチーズも入れよっか」ってごきげんなのがあーもう!カップメン食べたい!

 夜は病気んなった人や死んじゃった人が毎日増えてる発表があってママはマスクもペーパーも売ってないっておこだからうちは早くベッド行ってたけチのこと考えた。小森にいじられてもたけチはへらへらしてんのがそんな嫌われんのこわいかってなんかイラっとする。だってうちは思ったら言っちゃう系だからサリたちにたまにハブられるけどハブられたくなくてわざとへらへらすんのはしたくない。ダサいしめんどい。てかそんなふにゃたけチがなんでうちなんかにコクったかも意味わかんなって考えてたらいきなし二段ベッドの上から大洋が顔がさかさまに現れた。
「ねー瑞季。ハイはどう発明できる?」
「ハイ?ハイってハイ?」うちはむねのとこをさしたら、うんって言う。
「わかんないけど、勉強して大学行って博士になんじゃない?」
「今すぐは発明はむり?」
「むりっしょ。だって小学生は危ないじゃん」
「でもね瑞季、ぼく、ハイつくるよ。ハイがたくさん発明したら人死まないでしょ?だから宿題する」
 おやすみって大洋は顔をひっこめた。まじ意味わかんなかったけど次の日から大洋はガチ勉しまくっててまじでなぞ。

 終業式はひさびさみんなに会えてまじであがる。はるなは先パイカレシとぜんぜん会えないらしい。瑞季はどうよって言われたけどうちはまだ決めれてなくて、教室のすみっこで小森がさわいでる横でたけチはへらへらしてて、しゃきっとしろ!って感じだったんだけど、したらそこの男子たちが急にざわざわしはじめて、なんだろって見てたらやまべーがいきなし小森をなぐろうとした!うわって思ったら小森はよけて、手たたいて笑って「今やまべーがせきしたぞ!お前ようせいなんじゃね?近づくなー」って言ったらみんな机をはなして、輪ができた。
 やまべーは真ん中でぽつんと泣きそうになった。けどそしたら「ようせいとか言うな」っていきなしだれかが言った言い方がおとなみたいで、たけチだった。たけチはやまべーのそばに行って背中をなでてあげてた。けど小森が「とかってなんだよ」ってキレてたけチをなぐった。けんかになりそうで、うちだったらむかついてやりかえすけど、たけチはやりかえさなかった。てかほっぺ押さえて泣きはじめちゃったとこに先生が来て、男子たちがつれてかれた。
 しばらくして先生と小森たちが戻ってきて成績が配られて下校んなった昇降口でたけチに会った。ほっぺになみだの線が残ってて気まず。けどたけチはふにゃって笑って「先生にめちゃ怒られた。みんなでやまべーにあやまったよ」って、え?「なんで?たけチ悪くなかったじゃん。どうしてたけチがあやまんの?」「ううん。おれも悪かった。ちゃんと止めるとかできなかったもん」ってたけチは笑ったまんま変なくつのはき方して走って帰っちゃった。ランドセルのふたが開きっぱで、ばかばかゆってた。

 始業式がクラス発表だけであと四月も休みでずっと家、ずっと家、ゲームもあきたしずーっと家!みんなに会いたみがすぎるけど病気はどんどん大変みたいでどこも行けなそう。もうヒマすぎて大洋とでも遊ぼうかと思ったけど大洋はなんでか勉強ばっかやるようなって、逆に頭バグっちゃったかと思ったらまじで事件が起きたのはお風呂んとき「ぼく博士になれそう」って大洋はうれしそうに言った。「すごい宿題したもん!」って立ってうちの体をゆらしてくる目の前でちんこもぷらぷらしてた。ね?ね?ってしつこいから顔見たら、笑ってると思ったのにぼろぼろ泣いてて、おなかに赤いぼつぼつがたくさん出てて、急いでママとパパを呼んだ。ママが大洋をタオルでふいて、なんこうぬって、だっこして寝る部屋つれてったママも泣いてたっぽい。
 うちはパパに大洋が肺を作りたいって話したら、パパはそっかって鼻をつまんだ。
「しん災のとき、ママのおなかには大洋がいて、瑞季もまだ三才になる前でね。それで一年だけパパの実家に越した。瑞季も急に暮らしが変わってびっくりしただろう」
 うちはあんまきおくがないけど、ホーシャノ・ホーシャノってママが言ってたのはおまじないかと思ってた。今も地しんときはママが一番こわがる。
「あのときみたいに、ママも大洋も不安なんだろうな。瑞季にもがまんさせてごめんな」パパはうで組んで「ちょっと息ぬきがいるかな」って何か考えてるみたいだった。

 次の日早起きさせられてレジャーシートとか車につんでって頼まれて、パパはお弁当を作った。ママは反対するかもと思ったけど「私に運転させて」ってみんなで車で行った公園はしばふが広い緑の中に粉みたくシロツメクサが咲いてて、遊んでる子どももぽつぽついた。シートしいてバドミントンして、それからおしりにバンダナはさんでしっぽとりした。みんなガチで走ってママが最初にギブしたけど笑ってた。順番に疲れてシートに戻ったけど大洋はバドミントンのハネが風で戻るのを打ちかえすのをずっと夢中だった。

 お昼は完全おなかペコで、お弁当は何かなってなんとタッパーに豆玉がぎゅうぎゅう詰めで、うげ!ママもあんま好きじゃないからふたりでコンビニ行っちゃう?ってひそひそ話してたらパパがさみしみな顔したからしょうがなく冷たぬるい豆玉食べてたら、背中に「中川?」って呼ばれて見たら野球グローブしてるたけチがいた。
「ちわす」ってたけチはうちの家族にはずそうにおじぎした。クラスメイトって紹介したらパパが「おなかすいてる?」って、なんとたけチに豆玉をおすすめした。
「まじすか」ってたけチはシートに上がってきて、ママにアルコールスプレーされて、それから食べはじめたけど、あんなの食べさせたらやばくね?ってうちはびくってたら、ぐぁ!って目を開いたたけチは吐くかと思った、のに「めためたうまいっす!」って言うからうちとママはまじ?って苦笑い。たけチはパパと大洋と野球の話しながらうちとママの食べかけのも食べて「あざした!」って戻ってった。
 お昼が終わると大洋がママを引っぱってバドミントンをはじめた。パパはシートに寝っころがって「いい子だったな」ってあくびしたあと「思ったんだけど彼、瑞季のこと好きなんじゃない?」なんて言い出してさらに「彼だったらパパ許せるな」ってなぜかうなずいてたけど、は?いきなしなに?まじで意味不明。許すとか何だし、好きとかは自分で決めることだしってむかついて、むかつくからうちは公園をさんぽすることにした。んで歩いてたらはじっこでたけチがひとりでボールを上に投げてたから今度はうちが背中に「ひとり?」って声かけたらたけチはボールを落っことした。
「あ、中川。やまべーいるけど、うんこ中」
 たけチはボールを拾って下投げで投げてきた。うちが両手で取ったら、へいってグローブを構える。
「投げて。そっからならソーシャルディスタンス」
「何それ、つまんな」
 うちが投げたらたけチはまた投げてきて、うちも返して、なぜかキャッチボールが始まった。
「さっきのめっちゃうまいね」
「豆玉?」
「うん。あと中川の父さん優しいな」
「べつにだし。たけチんとこは優しくないの?」
「いなくなったよ。二才んとき」
「ふうん」
「中川はさ、きもちとか出せてすごいよね」
「なにそれ、意味わかんな」
 たけチが投げるボールはうちが手を出したところにふわっと来る。子どもの声が遠くでしてて、どっかからシャボン玉が飛んできてたけど、たけチはいつまでもコクったこと言ってこない。
「ねぇ、うちらってもう六年になってんのかな」
「六年とか?わかんないねー学校ないと。時間がどっか行っちゃったみたいだー」
 へにゃって笑うのが何考えてんのかまじでわかんなくて、けどその顔見てたらさっき食べた豆玉の甘みがねぱねぱ復活してきて、うちはボールを返すのをやめた。なんかわかった。たけチの笑いかたって豆玉っぽい。あのへんな甘みそっくり。そんでうちは甘いのは嫌いだ。豆玉なんて許さない。おこのみやきは肉もソースもたっぷりのしょっぱいのしか勝たん。
 けど、
「たけチさぁ」
「ん?」
「今度はさ、できたての食べなよ、豆玉、うちで」
「え、食べ行っていいの?」
「ぬるいより熱いほうがましでしょ」
「まじ?やった」
「でも今はだめ」
「だめなのかー」
「だめでしょ。ウイルスこわいし」
「いつならいい?」
「んっと」
 うちはじいっとボールを見ながら考えた。そんで「平和んなったら!」って思っきし高くボールを投げたボールは雲んなか消えてった。ぽかんと見上げたたけチの顔はダサくてだらしなくて、へんな甘みで、やっぱうちは甘いが嫌いと思う。
 けど、だけど人は、てか、たけチは、まぁちょっとくらい甘くてもいいのかもしんない。
「平和とかかー」
 空にまざったボールを探しながらたけチは言った。そのとき雲のあいだから太陽が光をふらして、たけチの顔がふわっと照らされた。まぬけに口を開けて、まぶしそうに目を細くしたその顔が、なんか、ずっと光っててほしかった。(了)

蕪木Q平さん

 かぶらぎ・きゅうへい 1988年横浜市生まれ。上智大文学部中退。学童保育児童支援員。保育士、家庭教師、介護、工場でのアルバイトなど、さまざまな仕事を経験した。ネットでの作品掲載や、文学賞応募に励んできた。横浜市在住。31歳。