阿南市から高知県室戸市までの海岸線を舞台にしたウルトラマラソン。14時間の制限時間切れまで15分を残して最終ランナーがゴールするのを見届けると、険しい表情が緩んだ。「けが人や熱中症患者を出すことなく何とかやり切れた」。気温20度を超す過酷な条件での大会を見守った総括責任者に、いつもの人懐っこい笑顔が戻った。

 副理事長を務める阿南市のNPO法人が計画を発表した2014年以来、沿線6市町と試走会を重ね、4年越しで夢をかなえた。実行委員長として、何より大切に考えたのは選手の体調。本番は21カ所の給水所を回り、選手への目配りを徹底するよう呼び掛けた。

 阿南市椿町出身。建築士を志し、鳴門工高(現鳴門渦潮高)に進んだ。卒業後、地元の設計事務所勤務などを経て30歳で独立。住宅、店舗、病院、学校などさまざまな設計を担当し、人の夢を形にしてきた。13年に仲間とNPO法人を設立し、市の活性化策を議論する中で、ウルトラマラソンの構想が持ち上がった。

 何事も成し遂げるまで努力するのが身上。建築の仕事で妥協せず、長く残る物づくりを追い求めてきた。そのこだわりが大会成功を導いた。「諦めなくてよかった。ランナー15人とボランティア100人の記憶に残る大会になったと思う」と感慨深げだ。

 趣味は社会人になって本格的に始めたテニス。どんな小さな大会でも優勝カップをもらうのが励みになった。正規の大会ではないウルトラマラソンも、選手が完走したことに意義があると信じている。「多くの人に喜んでもらえる大会に育てたい」と、早くも次を見据える。阿南市内で妻と2人暮らし。57歳。

 

阿南-室戸ウルトラマラソン 15人全員108キロを完走