ベートーベン「第九」の国内初演から100年になるのを記念した講座「板東俘虜(ふりょ)収容所と『第九』」(明治大、徳島県、徳島大主催)が8日、東京都千代田区の明治大駿河台キャンパスで開かれた。両大学の教授らが講演やシンポジウムで初演の史実や、今に続く日独交流について解説し、市民350人が耳を傾けた。
徳島大の井戸慶治教授は、第1次大戦中、鳴門市にあった板東収容所では、音楽をはじめさまざまな経済・文化活動が行われていたことを紹介。「松江豊寿(とよひさ)所長の寛容性とヒューマニズムいう基盤があったほか、ドイツ兵捕虜が知識人や専門家ら多様な構成だった」と、背景を説明した。
同大の石川栄作名誉教授は、第2次大戦後、収容所を転用した引き揚げ住宅に住み元捕虜の墓守を続けた女性の話を取り上げ、「交流は苦しみを体験した人たちの世界平和への思いに支えられ、受け継がれてきた」と語った。
明治大生の混声合唱団による「歓喜の歌」の合唱と、同大の井戸田総一郎教授による歌詞の解説もあった。参加者も井戸田教授からドイツ語の指導を受け、大学生と共に歌声を響かせた。
各地の第九合唱に参加しているという東京都中野区の清水幸子さん(70)は「第九の歴史を教わりたくて受講した。鳴門とドイツとの交流や、歌詞に込められた思いを合唱仲間に伝えたい」と話した。