徳島を元気にする事業アイデア・プランコンテスト「とくしま創生アワード」のウェブセミナーが、オンラインで開かれた。いろどり(上勝町)の横石知二社長、起業支援に取り組むNPO法人ETIC.(エティック、東京)の宮城治男代表理事、人工知能(AI)による会話分析サービスを提供するコグニティ(東京)の河野理愛社長の3人が起業ノウハウについて意見を交わした。また、新型コロナウイルスの感染拡大に関連し、「新たな需要が生まれ、起業にとっては好機になる」とのエールも送られた。オンラインのため、東京、大阪、広島、鹿児島など各地から70人が参加した。

 宮城 河野さんが現在のビジネスプランに行き着いたきっかけは。

河野氏「必要とされるものを」

 河野 お客さまに気付かせてもらった。米国の起業家支援プログラムに参加し徹底的にたたき込まれたのは、ヒアリングをしてフィードバックをもらい改善していくこと。顧客になりそうな人に意見を聞き、欲しいものや、対価としていくら払うかということを教えてもらい、初めて商品ができた。

 よこいし・ともじ 徳島県農業大学校卒業後、1979年に上勝町農協入職。86年、日本料理のつまものとして葉っぱを売り出す「彩(いろどり)」事業をスタートさせた。99年に第三セクター「いろどり」を設立し、2009年から現職。徳島市出身。61歳。


 宮城 必要とされる事業、伸びる事業にするには試行錯誤が欠かせない。いろどりがうまく回り始めた転機はあるか。

 横石 ある料理人に、事業を成功させるには人間力を高めるよう言われた。周りの信用を得ようと20代は実績作りに没頭。信頼関係ができると提案を聞いてくれるようになり、一緒に仕事をしたり応援してくれたりする人が増えていった。

 宮城 横石さんは徳島で起業する人を応援する立場でもある。地域で事業を立ち上げるときに、何を大事にすればいいと考えるか。

 かわの・りえ 慶應大在学中の2001年にNPO法人を設立し、スポーツ関連の事業を行う。ソニー、ディー・エヌ・エーを経て13年にコグニティ設立。AIを活用した会話解析サービスを提供している。18年に徳島事務所を開設。徳島市出身。38歳。

 横石 地域で起業したいとか小規模でも社会に役立つ仕事がしたいという人が、コロナ禍で増えてきたと感じる。大事なのは、地域にとって「いいこと」と事業性のバランスをとること。地域を見る視野の中に、自分が取り組みたい事業の本質を見極める必要がある。喜ばれることをやろうとばかりすると、事業としてはうまく行かない。継続性がなくなってしまう。

 宮城 良いことをやろうと訴えても、なかなか人は動かない。実際にニーズを捉えたり信頼を得たりということを通じて、今に至っていると感じる。河野さんは、どんな思いで徳島と向き合っているか。

 河野 2年前に徳島事務所を立ち上げ、現在40人が働いている。他の地域も候補だったが、大きく違ったのは自治体やメディアのサポート。講演や新聞で紹介されて、スタッフの採用につながった。地方において、信頼をどうつくるかは重要なポイントだと思う。

 みやぎ・はるお 1993年、学生起業家のネットワーク「ETIC.学生アントレプレナー連絡会議」を創設。2000年にNPO法人化し代表理事に就任した。社会起業家の育成支援に取り組み、千人を超える起業家を育成。小松島市出身。48歳。

 宮城 古里が徳島だということと、河野さんが積み重ねてきた実績が認められたのだろう。徳島出身で起業したい人や、地方を拠点に事業をやろうという人にとっては、徳島で起業するといろんな支援をもらえる機会があると強く感じる。このセミナーは、オンラインだから全国各地の人たちが参加してくれている。コロナ禍を経て、どのように戦略を変えて事業に向き合っているか。

 河野 自社サービスが使われていた集合型の社員研修が、感染対策でできなくなった。そこで、リモートの研修に使えるサービスを短期間で開発。「ピンチだからこそ必要な仕事が出てくる」「ピンチはチャンスだ」と信じて考え続けた。また、社会的にリモートワークの許容度が上がって、地方でできる仕事の幅は広がった。これは地方にとって、追い風だと思っている。

 宮城 まだ先行きを見通せない中で、作戦を立てるのは大変だと思う。その中で何がポイントになるか。

横石氏「新しい社会が需要生む」

 横石 今年の4月に売り上げが9割減となり、今は3割減にまで戻っている。大事なのは、社会変化の中で、世の中がどのように動くかを読んで仕掛けること。例えば、テークアウト需要が高まると考えて高級な弁当用に葉っぱを売り込む。新しい社会の動きによって生まれる需要に挑戦すると挽回につながる。

 河野 宮城さんに聞きたい。世の中の幸せを願いながらお金をもうけないといけない、自分の幸せとストレスの中で戦わなければいけないなど、新しい事業にはつらさ、難しさがある。幸せとお金のバランスをとって、ストレスから自分を守るための工夫は。

 宮城 自分にとって大事なこと、幸せとは何かという軸を持つこと。それがあると、目先の経済的な不安や困難に動揺しにくい。コロナ禍や震災は、価値観が揺さぶられる機会。ETIC.に来る人はそこで悩んでいる人がいるので、「本当は何がやりたいのか」という問い掛けをいつもやっている。今は、自分のやりたいことで新しい提案をすれば反応する人が多い時代だ。新事業を立ち上げるには好機だと思う。

宮城氏「豊かな暮らしは地方に」

 河野 思いがあるとか、やってやろうという人は、ぜひ(新しいビジネスに)挑戦してほしい。

 横石 ビジネスプランコンテストへの挑戦は、思っていることに対し、どういう意見や反応があるかを知るいい機会。1人では視野が狭くなるので、聞く耳を持って、誰かに投げ掛けてみてはどうか。

 宮城 起業や地方への見方が本当に変わると思う。大企業に入ることが安定という時代は終わろうとしていて、地方に豊かな暮らしや可能性があると確信している若者は多い。地域で起業しようという人に大きな波が来ている。はっきりとビジョンが見えていない人も、何かアクションを起こすことから始めてほしい。

 事業プラン募集 11月11日まで

とくしま創生アワード実行委員会は、県内外から徳島の活性化につながる事業アイデア・プランを募っている。徳島の発展や地域課題の解決、豊かさの創出につながる取り組みを対象とする。サポーターを務める県ゆかりの経営者らが審査し、実現を後押しする。

 事業の実施段階や規模によって部門を設け、▽アイデア▽年間売り上げ(目標)額が1000万円未満の「プランI」▽年間売り上げ(目標)額が1000万円以上の「プランII」―の3部門で募集している。2021年1月22日に徳島市で最終審査を開き、グランプリ(各部門1組)に支援金30万円を贈る。

 締め切りは11月11日(必着)。応募用紙は、とくしま創生アワードのホームページからダウンロードできる。問い合わせは、徳島新聞社内の事務局<電088(655)7331>。