「幸せが檻の中にある場合だってある」と話すなかむらあゆみさん=徳島新聞社

 阿波しらさぎ文学賞の応募をきっかけに小説を書き始め、3度目のエントリーで初入賞を果たした。

 「今回こそ最後の審査まで残りたい、と渾身の力を振り絞った自信作。うれしい。次作への励みになる」

 この掌編小説は、中学校になじめず2年時から通わなくなった自身の体験や、知人のイギリス人との交流の他、友人との対話など実際にあった出来事を織り交ぜてフィクションにした。

 構成が緻密で展開が早く、登場人物が10人いるため、慎重に文字を追わないと途中で理解できなくなるが、丁寧に読めば、こんな事実に気付くはずだ。

 「みんな誰もが、何らかの囲いの中で暮らしている。その囲いは見えるか、見えないかだけ」

 タイトルの「檻」については一見、猛獣や罪人を押し込める頑丈な囲いや部屋など、普通の生活とは無縁の暗く悪いイメージだが、伝えたかったのは決してそうではない。

 「檻は自分を守ってくれる味方でもある。幸せは一人一人の考え方次第で、幸せの捉え方は人それぞれ。幸せが檻の中にある場合だってある」

 作品の構想は、前回のしらさぎ文学賞に応募した小説が落選した時から湧いてきていて、少しずつ組み立てた。時々、パソコンを開いては思い浮かぶ言葉を打ち込み、応募の締め切り1カ月ぐらい前になって完成にこぎつけた。

 励ましの声を毎日のように掛けてくれたサラリーマンの夫には感謝している。誤字や脱字に目を光らせ、意味がつかめないくだりを指摘してくれた。

 10代後半から読書と映画鑑賞が趣味。村上春樹の小説のファンで、最近は今村夏子や川上弘美、小山田浩子の作品を好んで読み「分かりやすい表現や描写を参考にしている」。

 まだ小説を書いていなかった2017年には、思いつくまま随筆に挑戦した。体調を崩し仕事を辞めた40代前半だ。母から「ゆとりがあるなら書いてみたら」と勧められて書いた。

 そのエッセーも中学時代のつらい体験が題材で「普通に暮らせることが一番」と訴える内容だった。第15回とくしま文学賞の随筆部門で最優秀賞に輝いた。

 人生を振り返ってみると、青春時代に味わったさまざまな体験や思いが、ペンを持つ今の自分の背中を押してくれていると思う。仕事でラジオのリポーターやテレビのアナウンサーに夢中だった時代、インタビューで耳にした普通の人々の生き方や暮らしも構想のヒントになっている。

 3年前に徳島文学協会に所属し、小説について語り合う仲間との時間を大切にしている。「批評し合って腕を磨きたい。目指すのは同世代の女性の共感を得られる物語。一作ずつ最後の作品と思って書きたい」。 

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 「第3回徳島新聞 阿波しらさぎ文学賞」の受賞者3人に、作品に込めた思いを聞いた。3回に分けて紹介する。