「思い通りにならない人生のやるせなさを桜の木に重ねた」と話す三浦みなみさん=東京都内

 「『これを伝えたい』と明確に決めて書いたわけではないのですが、『人生は思い通りにならない。でも生きていかなくてはいけない』がテーマになっている気がします」。受賞作「去年の桜」について語る。

 去年の桜は、主人公の「私」が元恋人の「あなた」に送った手紙の形を取った二人称小説。がんになった私があなたの愛を受け入れられなかったこと、新しい恋人の大住さんとつるぎ町へ吉良のエドヒガン桜を見に行ったこと、大住さんが事故で下半身不随になり結婚話が立ち消えになったこと―などを淡々とつづっている。

 昨夏、自身も大病を患って手術を経験した。日常のあらゆることが揺らいでしまうように感じ、そのやるせなさを何とかして文章で表現したいと思った時、つるぎ町に実在する吉良のエドヒガン桜が思い浮かび、タイトルにした。

 初めて小説を書いたのは城北高校3年生の時。テスト中に「書きたい」衝動に駆られ、問題用紙に文章を突然書き始めた。この文章を基にした作品は「第5回高校生のための近畿大学文芸大賞」の優秀作に選ばれた。

 早稲田大学文化構想学部に進み、芥川賞作家の堀江敏幸教授の批評創作ゼミに所属。有名作家の小説を読んだり、自身でも作品を書いたりして、仲間と討論し合った。著名な歌人で作家の東直子教授の授業も選択し、短歌と詩の面白さを知った。「早稲田で過ごした4年間は私にとって宝物です」と懐かしむ。

 阿波しらさぎ文学賞に応募したのは2度目。昨年、吉野川市鴨島町に住む祖母から「徳島にこんな文学賞があるわよ」と知らされ、祖母と競うように作品を送った。「祖母は常にあれこれと考えを巡らせているユニークな人で、実際に弁当屋さんや岩盤浴の店を立ち上げました。短歌も作り、たまにメールで送ってくれます。独創性は祖母から受け継いだのかもしれません」

 創作には短期集中で取り組む。3、4カ月に1回くらい、書きたい気持ちが抑えられなくなった時にパソコンに向かい、寝食を忘れて1週間くらい没頭する。受賞作も昨年12月末に一晩で書き上げ、4月に推敲して仕上げた。

 好きな小説は古井由吉の「杳子」、谷崎潤一郎の「痴人の愛」など。「特徴的な女性が綿密に描写されているところに引き込まれる」という。

 現在、埼玉女子短期大学の就職課で学生に履歴書の書き方などを指導している。「教育にはずっと関わっていきたい。でも小説は書き続け、中央文壇の新人賞なども狙いたい」と力を込めた。

 ◇

 「第3回徳島新聞 阿波しらさぎ文学賞」の受賞者3人に、作品に込めた思いを聞いた。3回に分けて紹介する。