美波町伊座利地区で毎年、一風変わった運動会「伊座利共楽運動会」が開かれている。漁村ならではの趣向を凝らした種目があったり、障害物競走で大人たちが本気で「妨害」したり…。主役は住民全員で、子どもからお年寄りまで夢中になって楽しむ姿に、会場は笑いに包まれる。約100人の小さな集落が1年で最も盛り上がる日。住民は16日にある祭典を今年も心待ちにしている。
漁村を反映したユニークな種目が目を引く。最終種目のリレーは約3メートルの竹ざおに付けた大漁旗をバトンにしてつなぐ。かつて伊座利の女性が頭に籠を載せ、海産物を売り歩いた「いただきさん」にちなみ、頭を使ってボールを運ぶ競技もある。
名物になっているのが障害物競走だ。網をくぐり抜けようとする選手に何人もの大人が襲いかかって邪魔をする。運動会では老若男女が入り乱れて互いに「妨害」を図る場面が続出し、その度、観客の笑いを誘う。誰もが童心になる運動会を「日本一、変な運動会ではないか」と住民は誇る。
運動会は、伊座利小と旧阿部中学校伊座利分校(現由岐中学校伊座利分校)ができた1947年ごろから開かれている恒例行事。地区の秋祭り最終日である10月16日に毎年開催している。もともとは住民総出の行事だったが、地区で移住者受け入れの動きが活発化した2005年ごろから、より楽しめる運動会にしようと住民や学校が一体となって工夫してきた。最近は約80人が参加している。
大会長を務める伊座利町内会長の吉野清さん(68)は「人口の少ない地区なので、これからもみんなが笑って盛り上がる運動会にしていきたい。地区外からの飛び込み参加も歓迎です」と話す。
小中学生14人を代表し、今年選手宣誓する小学6年の楠本光太郞君(11)は「おっちゃんたちに負けずに頑張りたい」と張り切っている。