気軽に立ち寄れる飲食店街として整備された「徳島駅バル横丁」。先行オープン初日から行列ができた=徳島市の徳島駅クレメントプラザ地下1階

 郊外への大型店舗の進出などで消費が流出し、衰退が叫ばれて久しい徳島市中心部。県都に県内最大級のショッピングセンター(SC)・イオンモール徳島(同市南末広町)が誕生した2017年4月以降、徳島駅前の大型商業施設は客足がさらに鈍り、売り上げは数%落ち込んだ。市中心部と周辺部という立地の違いによる共存の道を探ろうと、多くの人が行き交う駅前の利点を生かす店づくりに活路を求めている。

 駅前の顔・そごう徳島店は、17年度の来店客数が前年度から10%ほど落ち込んだ。影響が出たのは子ども服と地下の食料品。百貨店ならではの外商部門や丁寧な接客が強みを発揮し、客単価や購買率を上げることで、売り上げは5%ほどの減少で持ちこたえた。同店によると、客数も昨年秋から持ち直してきており、黒字を維持できているという。

 県内唯一の百貨店としての優位性を高めるのがそごうの戦略だ。イオン開業後も呉服や宝飾、化粧品など単価が高い商品は落ちていない。それでも、千野史晴店長は「百貨店ののれんを掲げている以上、高品質な商品、接客は当たり前。その上で『話題』にしてもらえる店づくりをしていかなければ、人が集う場になり得ない」と危機感を隠さない。

 「これまではファッションに傾注してきたが、顧客のニーズが多様化している」と千野店長。西武・そごうグループの首都圏の店舗で行われている全国レベルの美術展、人気の物産展を取り入れるなど、「徳島初」の企画を紹介することが役割だと考えている。アミコ専門店街(42店舗)の売上高は約8%減だった。

 徳島駅クレメントプラザ(37店舗)は、テナントの3店舗がイオンモールへの出店を理由に撤退したこともあり、売上高は前年度から9%減った。木村和雄店長は「多くの店が客単価は前年度並みかそれ以上を確保し、踏ん張った。このぐらいは覚悟していたが、やはり影響は大きい」と漏らす。

 各店ともに影響は小さくないが、いずれもイオンに正面からぶつかっていくつもりはない。

 駅前は列車やバスなどの公共交通機関を利用する通勤通学者やビジネスマン、観光客らが日々行き交う。そこに目を付けたのが、クレメントプラザ地下1階に整備中の「徳島駅バル横丁」。仕事帰りなどに気軽に立ち寄れる飲食店街として集客を図る。

 バル横丁が今夏の全面開業を前に3店が先行オープンした4月24日には、そごう徳島店でご当地グルメを集めた「全国うまいもの大会」が始まった。アミコ専門店街を含めた3店は「合同祭」と銘打って共同で販促を行っており、今後も連携を強めて駅前の魅力向上につなげていきたいとの思いを共有する。

 「選んでもらうための努力は自分たちでしていかなければ」。千野・そごう徳島店長の言葉に強い覚悟がにじんだ。