中学時代の夢をかなえ、音楽で身を立ててきた。公益社団法人・大阪市音楽団が運営する吹奏楽団「オオサカ・シオン・ウインド・オーケストラ」に所属。35年間、ユーフォニアムという金管楽器の奏者を務めている。
定期公演に加え、音楽の素晴らしさを子どもたちに伝えるため、市内の小学校を巡り、クラシックやポップス、アニメの主題歌を演奏してきた。忙しい時期は1週間で12校を回ったこともある。
公演を聴いた児童からはよく礼状を送ってもらう。「熱心に聞いてくれているのが分かり、うれしいのと同時に手を抜けないなと気が引き締まる」と目を細める。
富田中学に入学したとき、先輩から「吹奏楽部に来ないか」と誘われた。「海の物とも山の物とも・・・」という感じで取りあえず入部。教師に命じられてユーフォニアムの練習に打ち込むうちに演奏の魅力に目覚めた。
進学した城南高校の吹奏学部はのんびりしていて「音楽室をほぼ独占していた」というほど個人練習に明け暮れた。東京芸術大学でさらに腕を磨き、卒業して1年後、ユーフォニアムの奏者に空きのできた大阪市音楽団を受験。念願だった音楽家への道が開けた。
大阪市音楽団を3月に定年退職後も再任用され、公演活動は続く。「年を取ったからこそ出せる音色がある」。演奏に味わいや深みを加えるべく決意を新たにしている。
後進の育成には情熱を燃やす。古里では徳島文理大学で非常勤講師を務めており、月2回、徳島市の山城キャンパスを訪れて学生にユーフォニアムを指導している。
「有望な若手をどんどん育て、小さな町でも音楽を聞く機会が増えるよう貢献できれば」。円熟期を迎えた音楽家らしく誓った。
みやけ・たかのり 徳島市生まれ。城南高校、東京芸術大学音楽学部を卒業。1983年に大阪市音楽団に入り、2015年12月から18年3月まで楽団長を務めた。奈良市在住。60歳。