ブリーダーの多頭飼いが崩壊、悲惨な環境下で生き残ったペルシャ猫(写真:ねこけん提供)

 NPO法人『ねこけん』は、猫の殺処分ゼロを目指し、日々活動を続ける団体だ。『ねこけん』のブログでは、猫を保護した際のリアルな状況、悲惨な姿まで隠すことなく伝えており、多くの読者に動物愛護の必要性を問いかけている。あるペルシャ猫ブリーダーの多頭飼い崩壊については、ブログでも詳細に語られている。ひどい飼育現場や猫たちの状態について、あらためて代表理事・溝上奈緒子氏に取材。その後の猫たちについても聞いた。

【写真】「人間のせいでごめんなさい…」悲惨な飼育現場、保護された幸せになった猫、旅立った猫

■崩壊したブリーダー、ペルシャ猫たちの目を覆いたくなるような惨状

 最初にアップされたブログのタイトルは、『ブリーダー崩壊!? 急げ!』。これが、数ヵ月にわたる壮絶な闘いの序曲だった。

 このとき『ねこけん』が保護したのは、ブリーダーの家にいたペルシャ猫たちだった。溝上氏は、「猫を買いにいった人から、『ひどい状態のブリーダーがいる』との通報があって。元々は『ねこけん』千葉支部の案件だったんですが、そこだけでは手に負えないということで、私たち本部の人間がすぐに駆けつけました」と振り返る。ブリーダー宅に赴いた溝上氏が目にしたのは、とんでもない状態の猫たちだった。ほとんどの猫が目や皮膚に異常があり、入院をしなければならないほど病気が悪化した猫たちもいたという。その数、31頭。

 ブログにも、劣悪な環境にいたペルシャ猫たちの写真が公開されているが、まさに目を覆いたくなるような惨状である。「病気や奇形は近親交配が原因。片目がないような猫たちに、子どもを産ませていたんです。命をなんだと思っているんだ! そう怒鳴りつけたくなりました」と溝上氏は静かに怒りをにじませた。ブログにも、保護当時の様子や、やりきれない思いがつぶさに記されている。

 <リビングには大型のケージが並べられていますが、どれも掃除や手入れはなされていません。うんちやおしっこで汚れたベッド。その中で、ブリーダーさんは布団を敷いて寝起きをし、生活をしています。

 猫たちは、同じ空間で生活をしていますが、どの子も目や皮膚に異常があり、痩せて汚れたペルシャ猫たち。それでもメス猫さんは妊娠しています。すぐに個体識別のため、ブリーダーさんに確認をしながら1頭ずつ、キャリーに入れて行きます。

 かつて美しかったであろう猫たち。愛情とケアさえできていれば、彼らは光を失うこともなく、体中の毛が引きつる痛みに耐える必要もなく、やせ細り、じっと死を待つような状況になることもなかった。

 ふつふつと心に浮かんでくる「なぜ?」「どうして?」の怒りに似た疑問。それでも「人を見ないで猫をみる」。悪臭が充満する室内で、ひたすら感情を抑えて、猫をキャリーに入れていきます。

 「こんな目にあわせてごめんね」「もう大丈夫だからね」「治療をするからね」>

 (ねこけんブログより)

 『ねこけん』のメンバーが、どんな思いでブリーダーからペルシャ猫たちを引き取ってきたかがひしひしと伝わる内容だ。

 ペルシャ猫といえば、長くて分厚い毛に覆われていることが特徴だ。しかし、まともにケアをされていなかったこの猫たちは、毛は固い毛玉となり、本来の愛嬌ある姿は見る影もない。重症の猫は病院に搬送し、強烈なアンモニア臭と腐敗臭に包まれた猫たちをシェルターに保護。そこで最初に手をつけたのは、“大マルガリータフェスティバル”、つまり猫たちを丸坊主にすることだった。

 「病院ではないので鎮静剤を打つこともできず、毛がひきつって痛かったと思います。本当にかわいそうで、みんなで泣きながらマルガリータにしました」と溝上氏。ブログの写真を見ると、刈られた毛はひっつき、ほとんど鎧のようになっていた。1匹に1時間以上をかけ、毛だるま状態の猫たちをバリカンで解放した。

 必死に治療をしても、逝ってしまった猫、生まれてすぐに逝ってしまった子猫もいた。だが、メンバーのケアの甲斐あって、しっかりと生き延びた猫たちもいた。生まれた子猫の1匹、スーくんは『ねこけん』を卒業し、申し出のあった家族に引き取られた。また同じく獅子丸くんも、トライアル飼育へと出発した。両目ともに外斜視で、まぶたが欠損していた獅子丸くんだが、今はとても穏やかな表情をしている。

 当時を振り返り、溝上氏は「とにかく病気の子だらけ。すぐに入院した子が3頭いて、それでも助からなかった子が1頭いました。人間のせいで…本当にごめんなさいという気持ちでいっぱいで。退院したら、おいしいものをたくさん食べさせてあげたかったのに」と悲しそうに語った。

■意外に簡単な資格取得に問題?「保健所の調査が必要」

 多くの動物たちを飼育するブリーダーになるには、さぞや難しい資格がいるのかと思えば、溝上氏によると意外に簡単だという。「だからこそ、保健所が定期的に調査しなければいけないと思います。病気の子が出たらすぐに繁殖をやめさせる、奇形の子が生まれたら手術をする、とか。日本の法律は甘すぎるのではないかと思います」。現在、このペルシャ猫のブリーダーには、「同じことを繰り返さないために、定期的に連絡を入れています」という。

 一口に猫を保護すると言っても、その現場は壮絶だ。『ねこけん』の活動は、猫たちに対する愛情と覚悟がなければ絶対にできない。それが確信できるエピソードのひとつである。

(文:今 泉)


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