芸術の秋。アート気分に浸りたいならフランス映画「アメリ」(2001年、ジャン=ピエール・ジュネ監督、オドレイ・トトゥら出演)がぴったりだ。映画が娯楽か芸術かの境目は監督の作家性に拠(よ)る所が大きい。ジュネ監督の唯一無二の世界観を濃厚に映し出す本作は、映画を芸術として存分に満喫できる。

©VICTOIRES PRODUCTIONS – TAPIOCA FILMS – FRANCE 3 CINEMA

 主人公のアメリは人付き合いが不器用な女の子。想像力を膨らませては他人の生活を妄想する一人遊びを楽しんでいた。そんな彼女がある出来事をきっかけに、他人を幸せな気分にさせようと小さなうそやいたずらを仕掛け始める。そんな中、捨てられた他人の証明写真を収集する変わり者の青年ニノに恋をするアメリ。他人を幸せにすることができても自分を幸せにする方法が分からないアメリの恋の行方は-。

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 パリのモンマルトルを舞台にした現代のおとぎ話とも言えるストーリーで、空想世界の住人のような個性的なキャラクターが続々と登場。ジュネ監督の暖色系の色使いを基調としたポップな映像感覚と相まってファンタジックに展開する。

 見どころはジュネ監督がパリの街を素材に構築した箱庭的映像空間だ。アメリが奇妙な冒険を繰り広げる舞台は現代のパリでありながら、あたかも有名な児童小説「不思議の国のアリス」で主人公アリスが迷い込んだ異世界のようだ。

 広角レンズやCGを使った特殊なカメラワークやユニークなカメラアングルが幻想性を強調。写真の中の人物がしゃべりだしたり、アメリの妄想を具現化したりする演出的な仕掛けもコミック調の仕上がりだ。美術セットや所々に配されたアイテムも雑多感に満ちており、おもちゃ箱をひっくり返したようでビジュアル的に楽しませてくれる。

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 アメリ役を演じるトトゥのどこか浮世離れした存在感も舞台の「不思議の国」感に拍車を掛けている。個性的かつキュートな童顔ルックスが世界観に絶妙にマッチして作品の魅力をより一層高めており、ブラックユーモアとエロスの要素も随所に盛り込みつつ、風変わりなヒロインの日常とロマンスの物語を異質の映像空間と共に味わえる。(記者A)

 【記者A】映像ソフト専門誌編集者、フリーの映画ライターを経て徳島新聞記者を務める。映画関連記事の編集や執筆、インタビュー、ロケ現場の取材などに長年携わり、1年間で365本鑑賞した年もあるなど、映画をこよなく愛する。

 

DVD版1500円(税抜き、発売・販売元 アルバトロス)