NPO法人ハートが開業準備を進めるスペイクリニックの手術室と、代表のスーザンさん=徳島市勝占町原

 動物愛護活動に取り組む徳島市のNPO法人HEART(ハート)が、犬猫の殺処分ゼロを目指し、不妊去勢手術を専門とする県内初の動物病院「スペイクリニック」の開設準備を進めている。通常1万~2万円ほどかかる手術費用を5千円以下に抑えることで、手術の普及を図るのが狙い。クラウドファンディング(CF)で開設資金を募っている。

 クリニックは10月末のオープンを目指し、同市勝占町原の事務所で準備を進めている。大阪府八尾市で不妊手術専門の動物病院を経営する橋本恵莉子さん(37)ら県外在住の獣医師4人の協力を受け、予約制で年間1千件以上の手術を実施する。

 同法人によると、県内の動物病院の多くは日常の診療・治療活動で多忙な上、手術費用も決して安くない。クリニックでは不妊・去勢に特化し、手術を1日当たり20件以上こなすことで、費用を5千円以下に抑える計画だ。

 2006年に設立された法人は、捨てられたり虐待を受けたりした犬猫の保護と里親探しに取り組み、これまでに約2千匹を保護、約1600匹を譲渡してきた。

 スーザン・マーサー代表(44)は、ペットが繁殖しすぎて世話をしきれなくなる「多頭飼育崩壊」により、捨てられる例が後を絶たないと指摘する。望まない繁殖を防ぐには手術による繁殖制限が有効だが、複数のペットを飼っている世帯ほど大きな経済的負担になるため手術を渋りがち。殺処分をなくすにはこの状況を打開する仕組みが必要だと考え、低コストで手術ができる専門病院の設立に踏み切ることにした。

 開設にはテナントの契約や改装、手術用機材と薬品の購入などに多額の資金が必要。この資金を確保するため、9月14日からCF仲介サイト「キャンプファイヤー」で450万円を目標に支援を求めている。

 スーザンさんは「活動を長年続けてきて、保護だけで殺処分はなくならないと分かってきた。動物に優しい地域社会をつくるため、手術普及へのご理解とご協力をお願いしたい」と話している。寄付は10月31日締め切り。

殺処分減少ペース鈍化

 県動物愛護管理センター(神山町)によると、県内の犬猫の殺処分数は年々減り続けており、2019年度は過去最少の752匹で、最も多かった03年度の1割以下だった。近年は減少ペースにブレーキがかかっている。

 殺処分数が最も多かったのは、センターが開設されて統計を取り始めた03年度の1万263匹。センターや動物愛護団体による、保護した犬猫の譲渡活動によって毎年300~1800匹ずつ減り続け、16年度は896匹と初めて千匹を割り込んだ。

 翌17年度は873匹、18年度は862匹と減少幅はわずかにとどまった。19年度は野犬の捕獲数が減ったことで犬は前年度比で215匹減ったものの、猫が105匹増えた。

 殺処分数が依然として多いのは、飼い主に捨てられる犬猫が後を絶たないためだとセンターは指摘する。捨てられた犬猫は野生化し自然の中で繁殖する。人に慣れていない野犬は保護されても新しい飼い主に譲渡するのが難しい。猫は繁殖力が強く世話をしきれなくなり持ち込まれるケースが増えているという。

 センターは「ペットの避妊と去勢は飼い主の責務。地域の猫に餌を与えている人は手術も併せて検討して」としている。