シンポジウムに参加した(左から)NHK和歌山放送局の仲山友章局長、徳島新聞の谷野圭助編集委員、静岡大の岩田孝仁教授ら=29日午後、兵庫県西宮市の関西学院大

シンポジウムに参加した(左から)NHK和歌山放送局の仲山友章局長、徳島新聞の谷野圭助編集委員、静岡大の岩田孝仁教授ら=29日午後、兵庫県西宮市の関西学院大

 南海トラフ巨大地震が発生した際のメディアが果たす役割を考えようと、兵庫県西宮市の関西学院大で29日、被害が想定される地域の現役新聞記者や、行政の災害対策の実務経験者らによるシンポジウムが開かれた。

 徳島新聞の谷野圭助編集委員は、東日本大震災では被災地報道に濃淡があり、住民の死亡率が高かった地域よりも、美談などで注目された被災地に報道が集中する傾向があったと指摘。結果として、報道回数の多い地域にボランティアや義援金も多く集まったことを紹介した。

 その上で、南海トラフ巨大地震では地元の徳島より被害想定が大きい隣の高知県に報道が集中する可能性があるとして「徳島が置き去りにされないか危機感を抱いている」と強調。「ここにも被害がある」と伝えるため徳島新聞が得た情報をテレビ局に提供し「徳島新聞によりますと…」と全国発信してもらう仕組みづくりができないかと問題提起した。

 NHK和歌山放送局の仲山友章局長は、東日本大震災から6年が経過し、防災への関心低下に懸念を示し「いかに生活の中に防災を取り込んでいくかが大事だ」と述べ、日常から防災報道を続ける重要性を強調した。

 静岡県庁で災害対策に取り組んだ静岡大の岩田孝仁教授も参加し「死者を出さない、命を守るとの目的はメディアと行政で同じだ」と強調した。